だーまんのブログ

平成生まれ・東大卒の不動産屋。人生の先生は本と映画。面白かった本や映画、ライフハック術、不動産のこと、受験についてなど、日々思ったことを好き勝手に書いていきます。

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【ネタバレ】『贖罪』湊かなえ/「償い」の連鎖はどこに行き着くのか?

「イヤミス」のど真ん中をいく作品、湊かなえさんの『贖罪』読みました!  

 

ある平和な田舎町で、小学生が殺されます。

近くにいながらも、彼女を助けられなかった4人の友人に対して、娘を亡くした母親は言います。

時効までに犯人を見つけなさい。

それができないのなら、わたしが納得できるような償いをしなさい。

 

この言葉が、彼女たちの人生を大きく変えます。

4人の独白という形で進む物語は、最後に意外な結末に行き着きます。

 

エドガー賞候補にもなった、湊かなえさん渾身の「イヤミス」作品です。 

なお、多少のネタバレは含みますので、未読の方はご承知ください。

 

30秒でわかる『贖罪』のあらすじ

物語の舞台は、「空気がきれい」が魅力の田舎町。

ある日、ここに大きな工場が作られ、都会から人がたくさん引っ越してきます。

 

事件は、地元の4人の小学生、紗英、真紀、晶子、由佳と、

都会からやってきた転校生・エミリちゃんの5人を中心に起こります。

 

夏休みのある日。

いつものように5人が学校で遊んでいると、知らない男が「換気扇の修理を手伝ってほしい」と近づいてきます。

男に指名されたエミリちゃんは、疑うことなく手伝いへ。

他の4人も、何事もなかったかのように遊びを再開します。

 

しかし、エミリちゃんがなかなか帰ってきません。

「さすがにおかしい」と思った4人が探しに行くと、エミリちゃんは死体となって発見されます。

 

夏休みで町に人も少なかったため、目撃情報も集まりません。

彼女たちも犯人の顔は覚えていなかっため、結果的に事件は迷宮入り。

 

エミリちゃんの母親・麻子は、娘を救えなかった4人に言い放ちます。

あんたたちは人殺しよ!

時効までに犯人を見つけなさい。

それができないのなら、わたしが納得できるような償いをしなさい。

そのどちらもできなかった場合、わたしはあんたたちに復讐するわ。

 

物語は、4人の独白、そして最後に母・麻子の独白、という形で進行していきます。

 

彼女たちは、事件をどう受け止めたのか?

彼女たちの「償い」とは?

物語が行き着く先には、衝撃の結末が待っていました。

  

母親の言葉から、不幸は連鎖していく 

一見、エミリちゃんの死が、4人の人生に大きな影を落としたように思えます。

しかし、正確には、母・麻子の「償いをしなさい」という言葉が、彼女たちの人生に不幸をもたらします。

 

その言葉は、彼女たちの人生にどのような影響を与えるのでしょうか?

 

紗英の場合。

エミリちゃんが「すでに女性だった(=生理がきていた)から、男に選ばれた」と思い、生理がこない身体になってしまいます。

無事に結婚するも、相手の歪んだ性癖が原因で、結果的に旦那を殺してしまいます。

 

真紀の場合。

教師になった彼女は、事件のとき、自分だけ家に逃げ帰ったことに罪の意識を持ち続けます。

その罪悪感に苦しんでいる時に、たまたま学校に不審者が侵入。

彼女は進んで不審者を攻撃し、結果的に不審者は亡くなってしまいます。

 

晶子の場合。

彼女は心に病を抱えてしまい、引きこもるようになります。

兄の結婚相手の連れ子と過ごすことで、少しずつ心が回復していきます。

しかし、兄が連れ子と性的な関係にあることを知った彼女は、無我夢中で兄を絞め殺してしまいます。

 

由佳の場合。

彼女は、事件の時に頼りになった「警察官」という存在に、憧れを抱くようになります。

姉の結婚相手の警察官に対しても、彼女は恋心を抱き、結果的に一線を越えて彼の子供を妊娠します。

しかし、その事実を隠したい彼に殺されそうになり、逆に彼を階段から突き落とし、殺してしまいます。

 

彼女たちは、全員が誰かの死に関わることになります。

そして、それが母親とエミリちゃんに対する「償い」だと考えます。

ようやくエミリちゃんと母・麻子に対しての償いができたと、ホッとしているのです。  

 

4人とは180度違う母・麻子の物語

ここまで読んだ僕は、母・麻子に対して、「悪魔のような人物だ」という印象を持ちました。

 

4人は、たまたま事件に巻き込まれただけです。

成人男性を相手にしたときに、小学生の彼女たちには、エミリちゃんを救う手立ては何もありません。

小学生そこらの子供に対して、彼女の言葉はあまりに重すぎます。

 

そんな気持ちで読み始めた、母・麻子の独白。

彼女の独白では、それまでとは180度違った物語が展開されていきます。

そのあまりの違いっぷりに、空いた口が塞がりませんでした。

 

彼女も、僕と同じ気持ちでした。

つまり、「償いをしなさい」という言葉は、まだまだ子供な彼女たちにとって、あまりに重すぎると感じていたのです。

それ以上に、自分の言葉を、彼女たちがそこまで重く受け止めていると思っていなかったのです。

 

母・麻子は、湊かなえさんお得意の「空気が読めてない人」の典型です。

4人の独白を聞いて、彼女たちが想像以上に重く受け止めていたことに驚いています。

 

もっと紐解くと、エミリちゃんの死も、実はただの偶然ではなく、母・麻子の人間性が生み出した悲劇だったことがわかります。

 

4人の気持ちを知った彼女自身は、ようやく自分の過ちに少しだけ気づきます。

彼女たちにもっと早い段階で会って、あの時の言葉をきちんと謝罪していれば、不幸の連鎖は止められたのかもしれません。

 

4人を巻き込んだ彼女自身も、最後に「償い」をすることになります。

 

「贖罪」が本当に必要だったのは・・・?

物語の本当の姿は、

「麻子自身が過去の罪を償わなかったからこそ、エミリちゃんの死という裁きを受けた」

というものでした。

 

4人に「償いをしなさい」と言い放った本人こそが、償いをするべき人物だったのです。

4人は、ただそれに巻き込まれただけ。

あまりに救いのない物語です。

 

物語の最後は、真紀と由佳の短い対話で終わります。

そこで、ようやくようやく、少しだけ希望が見えます。

そこには、麻子の呪縛から解放された2人の姿が描かれています。

 

この場面は、「2人の会話形式で色んなことを解説する」という、ちょっと野暮ったい形になってます。

しかし、最後の最後に少しだけ希望が見えたことは、せめてもの救いになりました。

 

『贖罪』は、湊かなえさん渾身のイヤミス作品!

母・麻子が盲目だったからこそ、起こってしまった悲劇の連続。

1人の読者として、この物語を楽しめるうちはまだいいです。

 

しかし、同じようなことは、いつ現実世界でおきてもおかしくないです。

人は、知らずのうちに、誰かを傷つけてしまっています。

自分にとって大したことなくても、相手にとっては大問題だったりします。

 

ささいな誤解から、悲劇は起こるものです。 

こういう物語を客観的に楽しめているうちに、ほんの少しだけでも、自分の行いを見直しておくとします。

 

湊かなえさん渾身のイヤミス作品、ぜひお楽しみください! 

 

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