「小便が赤くなったことがあるか?」
稀代の経営者、松下幸之助の仕事哲学。
一見穏やかそうに見える彼の、仕事にかける信念が表れている。
そんな彼の仕事論が、余すことなく綴られている。
全てを捨ててでも、若かりし頃に戻りたい
成人式で演壇した彼は、壇上から数千人の新成人を前にこう語る。
みなさん、もしできることならば、わたしは自分のいっさいを投げ捨てても、みなさんの年齢にかえりたい。
この本は、経営者として成功した彼が若者に向けて書いている。
大成功おさめた彼でさえ、ゼロになってでも、もう一度取り戻したい“若さ”という青春。
明日への希望、ワクワクを持った青春の時代こそ、人生で最も価値のある時代だと語る。
仕事は真剣勝負である
松下幸之助というと、外見からとても穏やかでおおらかな印象を受ける。
しかし、文面から見えてくるの彼の仕事哲学は、まさに武士だ。
あるとき、社長さんから、最近思うように商売がうまくいかないと相談を受ける。
彼は、父親の代から40年近く松下電器の代理店をやっていたが、彼の代になって経営が傾いてしまった。
そんな社長さんに対して、松下幸之助は語る。
商売というのは、ひじょうにむずかしいものだ。・・・いわば真剣勝負と同じだ。
どうしたらこの困難を克服できるかと、あれこれ思いめぐらして、眠れない夜を幾晩も明かす。
心配し抜き、考えに考え抜く。心労のあまり、とうとう小便に血が混じって赤くなる。
そこまで苦しんではじめて、どうしたらよいかわかり、・・・新しい光が見えてくる。
ただ頑張れ、ではない。
どうすれば利益が出るのか?
どのように工夫すればいいのか?
新しい道はないのか?
そういったことを、「小便が赤くなるまで考え抜いたのか?」と問いかける。
心を入れ替えた先に
商売は決して甘くない。
そんな生半可な気持ちでは、何をやってもうまくいかない。
ましてや、何十人かの人生を背負った社長さんは、口が滑ってもそんなことは言ってはいけない。
松下幸之助の言葉を聞いた社長さんは、心を入れ替える。
彼は自ら先頭に立ち、毎日得意先を2、3軒周り、お店の商品ディスプレイを手伝ったり、汚れがあったら自ら掃除したりした。
そういった地道な努力を続けて半年。
率先して行動する社長を見て、社員の態度が変わった。
社員の態度が変わり、しぜん代理店の業績は好転した。
安易に簡単な道を選びすぎてないだろうか
過度なストレスは、もちろんよくない。
そして、今とは時代も違うのかもしれない。
しかし、最近は本屋に行っても、
「楽して儲かる!」「簡単に成功できる! 」というフレーズが横行している。
僕たちは、安易に楽な道を選びすぎていないだろうか。
かくいう僕も、社会人のあるタイミングで、本当に働きまくった時期があった。
朝の8時前から、夜中の12時過ぎまでを続けた時期もあった。
はたから見るとクレイジーだ。
しかし、僕はやりたかった。
やりたかったから、全てをかけてがむしゃらに駆け抜けた。
不思議と、そういうときはエネルギーも出ていて、全然疲れなかった。
今思うと恐ろしい時代だったが、その経験が今の自分の支えになっている。
おかげで、数段高いレベルに行けた。
松下幸之助が、今の世の中を見たらどう思うだろうか。
真剣に、仕事に向き合えているだろうか。
胸に手を当てて、自問自答してみる。