東野圭吾さんの『パラドックス13』を読みました!
3月13日の13時13分13秒。
突然、街から人が消えます。
無人となった東京に残されたのは、わずか13人の老若男女。
なぜ、街から人が消えたのか?
なぜ、彼らだけが残ったのか?
残った彼らに、未来はあるのか?
一部の人間が恐れていた「P-13現象」とは一体何なのか?
崩壊していく世界で、それでも生きる人間の真理を描いた作品。
話が突飛すぎて入り込めないと思っていましたが、そんなことは全くありませんでした。
崩壊していく世界の様子、残された人たちの葛藤など、かなりのリアリティを持って読める作品です。
それでは、東野圭吾さんの『パラドックス13』をご紹介します!
『パラドックス13』の簡単なあらすじ(ネタバレなし!)
物語は、首相官邸で、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が「P-13現象」というものを報告する場面から始まります。
それは、
「3月13日13時13分13秒から13秒の間に、何かが起こる」というもの。
実際に何が起こるか予見できませんが、最悪の事態を想定し、警視庁や防衛省は対策を講じます。
そして、問題の3月13日当日。
警視庁管理官の久我誠哉は、事件の捜査で張り込みをしていました。
まもなく犯人逮捕という局面で、上から指令が入ります。
それは、「13時10分からの20分間は、何もするな」というもの。
上司の言葉に納得できない誠哉ですが、同じく張り込みをしていた弟・冬樹の勝手な行動により、犯人グループに銃殺されてしまいます。
その後、冬樹も同様に、犯人に撃たれます。
犯人に撃たれた瞬間、冬樹の周りの世界が変化します。
撃たれたはずの彼は、なぜか生きていました。
しかし、自分以外の人間が消えてしまいました。
人が消えた東京には、死んだはずの兄・誠哉も含めた、13人の老若男女しか残っていませんでした。
残った彼らは、力を合わせて生き延びることを選びます。
しかし、元の世界に戻れる保証はありませんし、方法もわかりません。
日々、世界の崩壊も進んでいきます。
そのような状況で、13人の命運は果たしていかに?!
『パラドックス13』の見所!(※ネタバレ含む)
ここからは、作品の見所をご紹介していきます。
多少のネタバレは含みますので、まだ読んでいな場合はご注意ください。
崩壊していく世界のリアリティがすごい!
突東京から人が消えたら、街はどうなるのでしょうか。
最初のうちは、そんなに困らないでしょう。
電気は通るし、しばらくはガスも水道もなんとかなります。
食料だって、消費する人がいないのであれば、死ぬほど在庫はあります。
物理的に、欲しいものは何でも盗み放題です。
しかし、それが数週間、数ヶ月続くとなると、話は全く変わってきます。
そのうち電気は消え、ガスも水道も止まります。
食料も徐々になくなっていき、食べ物の確保が難しくなります。
加えて、物語の中では、地震や大雨が幾度となく彼らを襲います。
その影響で、建物や道はどんどん崩れていき、街として機能しなくなります。
突飛な世界の話ですが、崩壊の過程が1つ1つ、丁寧に描かれています。
その様子がありありと想像できるため、まるで世界の崩壊を体験しているようなリアリティを感じることができます。
極限状態で、人は何を考え、どう行動するのか?
食べるものがどんどん減っていき、住む場所さえも安全とは言い切れない。
目の前で亡くなっていく人を助けることもできず、生きる目的さえも定かではない。
そんな極限状態に陥った時。
人は、それでも希望を持って生きることができるのでしょうか。
自分の欲望に勝てず、共通のルールを破ってしまう人。
生きる希望もない中で、誰かに恋することで生きる希望を見つける人。
築いてきたキャリアを失ったために、現実を受け入れられない人。
かつての自身を反省し、娘を守るため真摯に現実と向き合う人。
極限の状態でこそ、その人の一番人間らしい部分が表に出てきます。
隠していた弱さも、全て露呈してしまいます。
そのような状況にあって、冬樹の兄・誠哉は、生きる希望を持ち続けます。
彼のリーダーシップは、素晴らしい。
誠哉の心情は描かれないので、彼の本音はわかりません。
しかし、リーダーとして、時には非情な決断をしていくことで、彼らは前に進むことができたのです。
絶望しかなかった世界で、彼だけが光を示し続けたのです。
その光を追いかけることで、極限状態にありながらも、13人は少しずつ変化していきます。
自分のことしか考えていない人が、誰かのために行動したり。
愛する人のために、あえて非常な選択をしたり。
極限状態での人間模様は、この本の大きな読みどころです。
彼らが生存した理由と、「P-13現象」のネタバレ
「P-13現象」が一体何なのかは、読み終わってもいまいちわかりませんでした。笑
しかし、彼らが生き残った理由は判明します。
彼ら13人に共通していたのは、
「P-13現象が起こった3月13日13時13分13秒から13秒の間に、現実世界で死んだこと」
でした。
現実世界で死んだ彼らが、今この世界で生きている。
彼らは生き残ったのではなく、死んだことで別の世界に来てしまったのかもしれません。
物語の後半で、首相官邸に逃げてきた彼ら。
そこにあった資料から、「P-13現象」が再度起きることを知ります。
それを知った時、彼らは2つにわかれます。
・その時間に再び死ぬことで、前の世界に戻れると考える人たち
・生き続けることを選ぶ人たち
結果。
「2回目のP-13現象」が発生した時点で生きていた人たちだけが、元の世界に戻れました。
元の世界に戻った彼らは、前の世界での記憶はありません。
「P-13現象」以前と同様に、彼らの日常は再び繋がっていったのです。
崩壊する世界を生き延びた人だけが、元の世界に戻れたのです。
『パラドックス13』に一言!
僕は、現実離れした物語が苦手です。
物語の世界感に入っていけず、飽きてしまうことが多いです。
しかし、この作品は違いました。
「P-13現象とは何なのか?」
「世界はどうなってしまうのか?!」
「彼らは、救いのないこの世界を生き抜くことができるのか?!」
ということが気になって、読み始めたら止まりませんでした。
突然世界から人が消えたら、あなたはどうしますか?
ドラえもんのひみつ道具に、「独裁スイッチ」というのがあります。
のび太がこのスイッチを使って、世界から人を消すという場面があります。
小学生の時に読んで、すごく怖かった記憶があります。
まさに、その世界が描かれた作品です。
崩壊する世界で見えてくるのは、どこまでもリアルで生々しい人間の姿です。
かっこつけた話より、よっぽど人間の本質が見える作品でした。
「もしも、自分の周りの人間が消えてしまったら・・・」
そんなことを想像しながら、ぜひ『パラドックス13』を読んでみてください!
併せて読みたい!
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