湊かなえさんの『豆の上で眠る』を読みました!
失踪した姉が、2年後突然帰ってきました。
しかし、帰ってきた姉に対して、妹は違和感を感じます。
「お姉ちゃん、あなたは本物なの?」
姉妹とは?家族とは?血の繋がりとは?
そんなことを考えさせられる1冊です。
『豆の上で眠る』って、どんな物語?
主人公・結衣子(ゆいこ)が小学1年生の時。
二つ上の姉・万佑子(まゆこ)が突然失踪します。
犯人からの連絡もなく、わずかな手がかりを元に探し回りますが、何一つ事件解決の糸口は見つかりません。
そんな矢先、突然、失踪した姉が帰ってきました。
2年振りの再会を果たす姉妹!
しかし、姉を見た妹・結衣子は違和感を隠しきれません。
それを口にした目の前にいる女の子が誰なのか、私に判断することができなかった。
戻ってきたのは、本当にかつて仲の良かった姉なのだろうか?
小さな違和感をぬぐいきれない結衣子。
そして、彼女はついに悲しい真実を知ることになります・・・
姉の正体、そして失踪の真実とは・・?
2年間の時を経て、突然戻ってきた姉・万佑子。
心から嬉しいはずの出来事だが、結衣子は違和感を隠しきれません。
不審な点は、いくつもありました。
●大怪我をしたときの傷跡が、なぜか消えている・・・
●二人が大好きだった絵本について、昔の姉なら“絶対に言わないような”感想を口にした
●正しく使えていたはずのお箸の持ち方が、下手になっている
そんな姉に向かって、妹はハッキリと問います。
ーー誰なの?
しかし、姉が彼らの家族であることは、科学が証明しました。
●DNA鑑定の結果、両親の子供である可能性が高いと判定が出た
●幼い頃の母親にそっくりである
●姉と自分、2人しか知らない秘密を知っている
科学が証明してしまった以上、事実を受け入れるしかありません。
しかし、それでもやっぱり違和感は残ります。
帰ってきた姉の本当の正体は?
変なのは、いつまでも疑っている自分なのだろうか?
ラストで明かされる衝撃の真実は、悲しくも切ないものでした。
母親と、結衣子の愛情のすれ違い・・・
この物語は、
●姉の失踪から帰還までが4章
●姉が戻ってきてからが2章
という構成になってます。
つまり、姉が帰ってきてからよりも、失踪した姉を探すパートの方が物語としては分量があります。
姉の正体を探ることよりも、むしろ姉を探す過程の方が本編なのかも知れません。
この前半パートは、湊かなえさん得意の「愛情のすれ違い」が大きなテーマになっています。
母親は、どうやら姉・万佑子のほうが好きだということに、妹・結衣子は気づきます。
服も、姉に似合うものばっかり買ってきます。
姉とは、容姿、性格、何もかも違う自分に対して、結衣子は思います。
私は本当はこの家の子供ではないんじゃないか。
「もし失踪したのが自分だったら、母親は同じように悲しんでくれただろうか?」
そんな悲しい思いを抱えた結衣子。
母親の期待に応えたいという思いもあり、結衣子は自分を殺して母の無理難題にも明るく協力します。
その姿が、切なくも応援したくなってしまいます。
湊かなえさんの多くの作品では、「愛情のすれ違い」が大きなテーマになっています。
●『母性』では、マザコンの母親と、その母の愛を欲する娘
●『夜行観覧車』では、子供への過度な期待を持った親と、自分を素直に見て欲しい子供
人間は、誰かに認めてもらいたい生き物です。
親、友達、恋人、先輩、上司・・・誰しも、誰かに認められたいという思いを抱えてます。
だからこそ、主人公・結衣子の姿は、「認められたい!」という我々の本能をくすぐります。
親にまっすぐ愛されたいという、主人公の気持ちに共感してしまうのです。
姉妹って、何だろう?家族って、何だろう?
タイトルの『豆の上で眠る』
これは、童謡『エンドウ豆の上に寝たお姫さま』からきています。
何重にも重なった布団の下に、エンドウ豆をおきます。
布団の上で寝たときに、そのエンドウ豆の違和感を感じることができるのが、本物のお姫様だというお話です。
この物語では、その違和感を感じるのが主人公の結衣子です。
つまり、彼女だけが本物なのでしょうか?それとも・・・
最後の結末は、とても考えさせられます。
姉妹とは。家族とは。
ぜひ、みなさんも読んでみてください!
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