「同じ金額払うなら、賃貸より、将来資産になるマイホームを買った方がいい」
そう言ってマイホームを買う人は多いです。
しかし、これはとても安易な考え方です。
「家賃を払うのはもったいないから、家は買ったほうが得」という理屈は、不動産投資のプロである私からすれば、とてもあえりえない理屈です。
そう語るのは、 ボスコンを経て、三井不動産で不動産にプロとして関わっていた牧野さん。

マイホーム価値革命―2022年、「不動産」の常識が変わる (NHK出版新書 519)
- 作者: 牧野知弘
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2017/06/08
- メディア: 新書
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この記事では、
●自分の家を買うことの隠れたデメリットとは?
●マイホームは、本当に資産になるのか?
という点について書いてます。
家賃がもったいないから、将来資産になると思って家を買おうと思っている人は、ぜひ参考にして見てください!
マイホームを買うことのデメリット
マイホームを買うことは、必ずしもメリットだらけではありません。
最初に、マイホーム購入の意外なデメリットについて、簡単に解説します。
流動性がとても低いので、何かあった時に動きにくい
まず、マイホームは流動性がとても低いです。
つまり、簡単に売れません。
すると、どんなデメリットがあるのでしょうか?
●転勤になった時
●隣に変な人が引っ越してきた時
●子供が増えて、部屋数が必要になった時
●万が一天災や事件があって、住む場所を変えたい時
●新しく住みたい場所が見つかった時
といういった時に、身動きが取りづらくなります。
毎月のランニングコストはだんだんと増えていく
当然、マイホームは日に日に劣化していきます。
特にマンションについては、
新築の分譲時点では、どのマンションも修繕積立金は著しく低い金額設定になっています。
修繕積立金は買った時点が一番安くなっているので、当然叙情に上がっていくことを考慮しなくてはなりません。
過去最低水準の金利は、これからは上がるしかない
また、住宅ローンの金利も今は過去最低水準です。
バブル当時は8%くらいあった変動金利も、今は0.5%程度のところもざらです。
今が過去最低水準なので、これから上がる可能性は十分あります。
管理費・修繕積立金、および金利は十分上がる可能性があります。
しかし、今の時代、同じだけ年収が上がる保証はあるのでしょうか?
今の家賃と「住宅ローン+管理費・修繕積立金」を単純に比べて、同じくらいなら家を買った方がいいという判断は、将来的に自分の首を締める可能性が大いにあります。
マイホームは、本当に資産になるのだろうか?
マイホームは「将来的に資産になるから」とみんなが口を揃えて言います。
しかし、本当にそうでしょうか。ここからは、その点について検証してみます。
本当に資産になっているのは、平成バブル期以前に買った人たち
不動産の価値は、平成バブル以前はそれほど高くはありませんでした。
著書の中にも出てきますが、平成バブル以前に買ったマイホームは、今でも当時の価格より3倍近くになっているものも多いです。
その当時マイホームを買った世代にとって、確かに不動産は「資産」です。
しかし、
平成バブル期以降に住宅を購入した人にとって、明らかにマイホームは資産ではなく「負債」と呼べるものになっています。
と著者は言います。
平成バブル以降は、高い金利に加えて、物件価格も高騰していました。
無理して買った物件も、今や価値は半分以下という実例はざらにあります。
当時無理して8000万で買った物件が、今では4000万も届かない。
投資した金額の半分以下になってしまうものは、果たして本当に「資産」と呼べるのでしょうか。
リーマンショック以後に儲けが出たのも、ほんの一部のエリア
確かに、リーマンショック以後に不動産価格が大幅に下落したことから、そのタイミングで買って含み益を出している事実はあります。
しかし、それは本当に一部の限られたエリアでの話です。
リーマンショック後の住宅価格の上昇は、実は都心部のごく限られたエリアで起きた現象にすぎません。
郊外住宅地を含むその他のほとんどのエリアでは、住宅価格が反転したという事例はほとんど存在しないのです。
増え続けている空き家問題
また、今後は空き家問題がより深刻になっていきます。
すでに郊外では人口減少による空き家問題が深刻化しています。
しかし、空き家問題は郊外だけの話なのでしょうか。
国土交通省の調査(2013年)によれば、都内の分譲マンションの世帯主のうち、約半数が60歳以上という衝撃的な結果が発表されています。
つまり、あと数年しないうちに、都内の分譲マンションでも空き家が大量発生する可能性を秘めております。
すると、マンション供給が一気に増えて、結果的に価格は下落します。
マンションの維持管理の難しさ
また、マンションにおいてですが、空き家が発生するということは、別の問題を生みます。
マンションは、維持管理がとても大切です。
そのために、毎月の管理費と修繕積立金があるのです。
しかし、空き家があるということは、それらの回収ができなくります。
必要な経費が回収できなければ、マンションの維持管理が困難になり、結果的に価値の下落へと繋がります。
2022年の生産緑地問題
さらに、大きな懸念は2022年の生産緑地法の指定解除問題です。
これは簡単にいうと、
「これまで特別に減税をしてもらっていた都心部の農地が、2022年を境に減税されなくなる」
ということです。
減税のメリットがなくなれば、無理に農地にしておくメリットがなくなるので、一気にマンションや戸建てのが進む可能性があります。
そのようなエリアは、東京だけでも、東京ディズニーランドとディズニーシーを合わせた敷地33個分もあります。
供給が増えるということは、当然価格の下落へ繋がります。
20年、30年後の価値は誰にもわからない。それでも、マイホームは資産だとまだ言える?
まとめに入ります。
「家賃を払い続けるのはもったいないから、同じ金額払うなら将来資産になる家を買ったほうがいい」という理屈は、
●払い続ける金額が将来も同じであること
●買ったマイホームが将来的に資産になること
が前提です。
しかし、上記で見たように、
●住宅ローン金利はこれ以上安くならないので、今後は上がる可能性しかない
●毎月の管理費・修繕積立金は、買ってからどんどん高くなる
ため、毎月のランニングコストは上がっていきます。
また、
●空き家問題、生産緑地の指定解除等から、不動産の価値は落ちる可能性のほうが高い
つまり、「マイホームが20〜30年後に資産になる」保証は、どこにもありません。
上記の理由だけでマイホーム購入に踏み切るのは、とても安易な考えなのです。
自分の頭で考えよう
大事なことは、自分で情報を集め、自分の頭で考えることです。
そして、こういった情報に対して、
●発信者は誰か?
●意図は何か?
を慎重に見極める必要があります。
かつて新築マンションの営業をしていた頃に、とても疑問に思ったことです。
「家を買った方がいいのか、賃貸にした方がいいのか?」という質問を、営業マンに真剣に相談してるお客様があまりに多いのです。
営業マンは、家を買って欲しいに決まってます。
当然、どんなに親身に見えても、「買った方がいい」という結論に持っていきたいに決まってます。
中には、本当にお客様のことを思って、本当のことを言ってくれる人もいるかもしれません。
しかし、そういった人の方が少数であることは、頭の片隅に入れておかなければなりません。
彼らの意見を鵜呑みにするのでなく、利害関係のない第三者の意見を聞きましょう。
そして、自分で情報を確かめて、自分の頭で考えましょう。
これから家を買おうと思っている人、「家賃を払っているなら家を買った方がいいのかな?」と考えている人にとって、少しでもヒントになれば幸いです。
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マイホーム価値革命―2022年、「不動産」の常識が変わる (NHK出版新書 519)
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- 発売日: 2017/06/08
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