だーまんのブログ

平成生まれ・東大卒の元不動産屋→現・外資コンサル。人生の先生は本と映画。面白かった本や映画、仕事について、など日々思ったことを好き勝手に書いていきます。

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【映画評】『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』批評家支持率99%の名作

いろんなところで評判を聞いていた、

『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』を観てきました。

https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BMzVlYzgxYjAtYzhhZi00MDc1LTlkZDMtMTRhZWI0MTg5YTRjXkEyXkFqcGdeQXVyNTAzMTY4MDA@._V1_SY1000_CR0,0,640,1000_AL_.jpg

www.imdb.com

 

予告はこちら。


口コミで話題を呼び全米で社会現象に!!/映画『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』本編映像

 

場所はここです。

joji.uplink.co.jp

 

この映画館、ユニークな映画を数多く上映しており、ずっと気になっていました。

内装も小洒落てて、椅子の座り心地もよく、また通いたくなる空間でした。

 

さて。

本作品、Rotten Tomatoesという海外のレビューサイトで、批評家支持率99%を叩き出しています。

(参考までに、『ジョーカー』は69%、『トイ・ストーリー4』は97%)

 

Eighth Gradeというと、中学2年生。

まもなく高校生になる、イケてない女の子ケイラの物語。

 

中学2年生って、まさに思春期のど真ん中。

僕自身、その頃は本当に良い思い出がなくて。。笑

当時の自分と重なって、心がグリグリ抉られました。

90分というコンパクトな映画ながら、何度も席を立ちたくなりました。笑

 

これ、既視感ある・・と思ったら、

『桐島、部活やめるってよ』ですね。

これを観ていた時のグリグリ感とそっくりでした。

 

途中はもうしんどかったけど、最後はしっかりと希望を見せてくれます。

久しぶりに、これでもかってくらいに泣きました。

 

心が揺さぶられた映画だったので、感想など書いていきます。

なお、映画評の部分でネタバレしていきますので、ご了承ください。

 

ちなみに、皮肉ですが、本作は一部の性的なシーンのために、

13歳の人生を描きながら、13歳が一人では観れないR指定となったそうです。

 

あらすじ

8年生(日本でいう中学2年生)をあと1週間で終える、主人公ケイラ(エルシー・フィッシャー)

彼女が6年生の時に、8年生になった自分に向けたタイムカプセルを受け取ります。

その箱には、

『To the coolest girl in the world(世界でいちばんクールな私へ)』

と書かれています。

 

そんなことを自分に向けて書いてしまうくらいだから、察してしまいますよね。

彼女は、全然イケてないのだ、と。

 

肌も荒れていて、ちょっと太っていて、オシャレでもない。

学校に、これといった友人もいない。

 

そんな彼女にとって、唯一の居場所はSNSの中。

イケてるYoutuberとして、自分のチャンネルでは、

「勇気を持つ方法」「学校人生を楽しく過ごす方法」

を、イケてない子に向けて発信しています。

 

朝一にばっちりメイクしたあとで、

あたかも寝起きを装って自撮りをアップしたり。

 

SNSの中では、彼女は最高にイケています。

 

そんな彼女は、父親と二人暮らし。

学校でのストレスもあり、家ではろくに親子の会話もなく、

見るからにギクシャクしています。

 

そんなある日、彼女はクラスのイケてる女の子に、誕生日会に誘われますが・・・

 

 

いろいろな考察

「本当の自分」はどこにいるのか

本作品は、学校という狭い狭い世界で葛藤する女の子の物語。

類似作品としては、『桐島、部活やめるってよ』がありますね。 

www.daaman-blog.com

 

学校ヒエラルキーって、世界共通。

 

中学2年生にとっては、学校は世界の全て。

その世界では、イケている男女が世界の中心です。

 

本来は世界の中心にいるはずの自分が、なぜか除け者にされている。

自己認識と、現実世界のズレを解消するために、

ケイラはSNSの世界に「本当の自分」を作り出すことで、精神の安定を図ってます。

 

だけど、それもムリしているので、

彼女は日々ギリギリのところで生きています。

本当の「本当の自分」を出せる場所が、家にも学校にも、SNSの中にもないのですから。

 

世界の中心にいないと、自分は存在してはいけないような錯覚をさせる、

学校の同調圧力って、本当に怖いですよね。

 

『桐島、部活やめるってよ』の前田(神木隆之介)なんかは、

そんなヒエラルキーとか無視して、自分の世界で生きてます。

周りから気持ち悪がられようが、オタク扱いされようが、

学校ヒエラルキーなんて無視して生きている人にとっては、なんでもないことなんですよねー。

 

また、学校ヒエラルキーの被害者は、何もケイラだけではありません。

イケてる女の子たちだって、同じだと僕は考えます。

 

なぜなら、「イケている女の子たちが、別に仲が良さそうには見えない」からです。

彼女たちは、いつもスマホをいじってます。

ろくに会話してなくない?と思ってました。

一緒にいるのは、自分が世界の中心にいることを確認して、安心するため。

学校がバラバラになったら、絶対に連絡取り合わないだろうなー。 

父と娘の物語

この映画の大きなテーマの1つは、「父と娘の関係」です。

いわば、

「娘の本当の姿を知らないのは、父親だけ」

というやつです。

 

以前ご紹介した『サーチ』という映画も、同じテーマを扱っていましたね。

www.daaman-blog.com

 

『サーチ』は、娘のSNSを通じてはじめて、自分だけが知らない娘の顔が徐々に露わになってくる、ホラーチックな物語でした。

 

本作の親子に限らず、思春期の親と子って難しい。

特に、それが異性同士の場合は、もっと難しい。

 

ケイラは、学校でも、SNSの中でも無理しています。

だけど、娘心として、無理していることは決して父親に悟られたくない。

そもそも気にかけて欲しくない。

だって、「本当の自分」は、親に心配されるような女の子じゃないんだから。

だからこそ、気にかけてくれる父親のことが、ますます鬱陶しい。

 

この親子は、最初からずーっとギクシャクしているのです。

 

だけど、ある事件をきっかけに、ケイラは一歩踏み出すことにします。

彼女は、6年生の自分が作ったタイムカプセルを燃やすことにします。

『世界でいちばんクールな私へ』と託した、6年生の自分の夢を、焼くのです。

 

父親に、同席してほしいと伝えるケイラ。

火を前にした二人のこのシーンは、涙なしでは観れません。

https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BZDYxZWY4NjQtYzM2Ni00YmE0LTlmZDItNTZlZGMwYWVkZWI0XkEyXkFqcGdeQXVyNDg2MjUxNjM@._V1_SY1000_SX1500_AL_.jpg

www.imdb.com

 

ここで、ケイラは言います。 

(なお、ここからのセリフは僕の記憶を頼りにしているので、元のセリフと違う可能性大ですが、ご容赦ください)

 

自分が母親になった時に、娘が私みたいな女の子だったら、きっと悲しむと思う

 

それに対して、父親は言います。

ケイラ、それは違う。全然間違っているよ

 

そして、こう続けます。

俺は、お前の父親であることを、本当に嬉しく思っているんだ。

俺は、お母さんが家を出て行ってから、ずっと怖かった。

「人には優しく接しなさい」とか、「思いやりを持って」とか、

大事なことをちゃんと教えてあげられるかって、ずっと心配だった。

だけど、あるとき気づいた。

ケイラは、俺が教えなくても、そういうことを自分で勝手に学んでいるんだって。

学校の先生にも、「素晴らしい育て方しましたね」って褒められたけど、俺は何もしてないんだ。

ただ、ずっと見ていただけなんだ。

それで、俺はずっとずっと昔に、もうケイラのことで怖がるのをやめた。

お前はずっと、俺に勇気を与えて続けてくれている。

 

ケイラは、無言で父親に抱きつきます。

 

この父親、ちょっと抜けてて頼りなさげなんだけど、それがまた愛らしくて。

本当にケイラのことが大好きで、気にかけずにいられない。

 

最後はやっぱり、親の愛情なんだなーと。

 

少女の成長の物語

中学卒業を控えたケイラは、高校生の自分に向けて再びビデオメッセージを送ります。
 

だけど、今度のメッセージは、6年生の時とはちょっと違います。

 

高校生活は楽しい?

彼氏には、大切にしてもらっている?

あなたは、大切にされる価値ある人なんだからね。

楽しくあるといいけど、でも楽しくなくても、大丈夫。

中学は全然楽しくなかったけど、それでも前に進めた。

同じ状況は、ずっと続かない。

前に進んでいれば、いつか状況は変わる。

そうやってつまらない中学時代を乗り越えられたから、

つまらなくたって、全然大丈夫!

  

大事なのは、心の持ちようです。

人生では、避けようと思っても、つまらないことは死ぬほどたくさんやってきます。

そういう場面に遭遇しないように努力するのも1つですが、

そういう状況でも、なんとかやっていける心の強さを、僕は持ちたい。

 

勝つ力というより、負けない力。

この言葉は、橋本治先生の下記作品よりパクってます。

 

 

13歳の彼女の成長に、勇気をもらった物語でした。

 

13歳の人生を通して、それぞれの人生をみる

13歳のケイラに、観る人は自分を重ねずにはいられません。 

 

自分でない何者かになろうとして、でもなれなくて。

ここではないどこかに、「本当の自分」がいるんだって、現実逃避してみたり。

そういう経験って、誰しもあると思います。

 

だけど、ありのままの自分を受け入れてくれる人は絶対にいる。

つまらない毎日でも、前に進んでいれば、いつか状況は好転していく。

 

13歳のケイラだって、勇気を出して前に進めたんだ。

それなら、僕だって・・・

そう思わせてくれた、素敵な作品でした。