下高井戸シネマにて、『ペンタゴン・ペーパーズ』を観てきました!
(ちなみに、HPにある割引ページ見せると、チケット100円引きになります!)
実際に起きた「ペンタゴン・ペーパーズ暴露事件」を題材にしたこの映画は、スピルバーグ監督が「今作らなくてはいけない」という使命感を持って作った作品。
「政府 対 報道の自由」という社会的テーマを持ちながらも、スピルバーグらしく、エンタテインメント要素もきちっと盛り込んでいます。
今観ておくべき1作。『ペンタゴン・ペーパーズ』をご紹介します。
- 30秒でわかる!『ペンタゴン・ペーパーズ』のあらすじ(ネタバレなし)
- 『ペンタゴン・ペーパーズ』のレビューや感想など(ネタバレあり!)
- 『ペンタゴン・ペーパーズ』を観ようか迷っている人へ
- 『ペンタゴン・ペーパーズ』が好きな人には、こちらもおすすめ!
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30秒でわかる!『ペンタゴン・ペーパーズ』のあらすじ(ネタバレなし)
ベトナム戦争に関する機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」
そこには、国民に知らされていないベトナム戦争の真実が書かれていました。
その内容をリークしたニューヨーク・タイムズ紙に対し、政府は記事発行停止の命令を下します。
大人しく命令に従うニューヨーク・タイムズ紙を横目に、ワシントン・ポスト紙はベン(トム・ハンクス)を中心に、自分たちもリークをしようと画策します。
なんとか情報を入手した彼らは、一刻も早く新聞に掲載するために奔走します。
しかし、ワシントン・ポスト紙の存続に関わるとして、役員たちは猛反対。
掲載を希望するベンたち現場の人間と、反対する役員との間で、トップのキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)は、困惑します。
彼女は、父、そして夫から会社を受け継いだだけであり、難しい決断をできずにいました。
果たして、記事は無事掲載できるのでしょうか?
政府に対して、「報道の自由」を巡って戦った人たちの、実話の物語です。
『ペンタゴン・ペーパーズ』のレビューや感想など(ネタバレあり!)
ここからは、観た感想や思ったことを書いていきます!
なお、多少なりともネタバレは含みますので、まだ観ていない人はご了承ください。
実際にアメリカで起こった事件を題材にしている作品
この映画の大きなポイントは、実際にアメリカで起こった事件を基にしてること。
「ペンタゴン・ペーパーズ暴露事件」から、「政府 対 報道の自由」の戦いになり、結果的に報道の自由が勝利。
世論も、その後大きく変わったそうです。
それだけに、映画を観終わったあと、「スクリーンの中だけの物語」では済まされない何かがあります。
そう、政府に対して戦ったのは、何も特別な人間ではありません。
言ってしまえば、新聞社のただの一記者。
「同じ状況に置かれた時に、自分も彼らと同じ判断を下せるだろうか?」
ぼんやりと、映画の余韻の中で、そんな問いかけが残りました。
何もできなかった女性オーナー:グラハムの成長と変化
主人公の1人キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)は、ワシントン・ポスト紙のオーナー。
「メリル・ストリープ=マーガレット・サッチャー」のイメージが強かったため、弱々しい彼女が一体何者なのか、途中までよくわかっていませんでした。笑
彼女は、父親→夫→本人と、ワシントン・ポスト紙のトップを引き継いだ立場。
決して、実力でトップになったわけではありません。
役員の前で、うまくスピーチもできない彼女。
言葉にしないにせよ、周りは彼女のことを「ただの象徴」として見ている節があります。
そんな彼女の成長と変化は、物語の大きなポイント。
主演女優賞ノミネートも納得の変化です。
人には、戦うべき時があります。
彼女は、大きな決断に迫られます。
「ペンタゴン・ペーパーズ」の内容を、新聞に載せるかどうか。
載せるべきだというベンに対して、反対する役員たち。
載せることは、すわなち国家と戦うことになります。
それは、社員たちを路頭に迷わせる可能性も含んでいます。
役員たちは、保身からか、断固反対します。
今までなら、彼らの意見を聞かないと何も判断できなかった彼女。
しかし、父や夫の言葉を思い出し、彼女は決断します。
大事なことは、ワシントン・ポスト紙を守ることではありません。
国家の、報道の自由を守ること。そのための、ワシントン・ポスト紙です。
掲載の決断を下した彼女は、別人に変わっていました。
ずっとナヨナヨしていたグラハムにやきもきしていたので、この場面は涙なしでは観れません。
また、「ペンタゴン・ペーパーズ」の掲載を巡って、ニューヨーク・タイムズ紙と一緒に戦った裁判のあとの出来事です。
報道陣にコメントするニューヨーク・タイムズ紙を横目に、グラハムは「言いたいことはすでに言ったわ」と言って、さっさと裁判所を後にします。
裁判所を去る彼女の周りを、たくさんの女性が囲みます。
映画の舞台となる1970年代初頭は、女性の社会進出は今ほどなかった時代。
グラハムの大きな決断は、報道の自由を守っただけでなく、多くの女性にも希望を与えたのでした。
些細なシーンですが、彼女の決断がもたらした影響に、かなり感動しました。
一体となって戦うワシントン・ポスト紙
政府と戦うのは、何もグラハムだけではありません。
現場レベルでも、激しい戦いがありました。
政府がニューヨーク・タイムズ紙にストップをかけている間に、早く情報を載せてトップを取りたいワシントン・ポスト紙。
自分たちも情報を入手すべく、奔走します。
なんとか文書を手に入れますが、4000ページにも及ぶ書類には、なんとページ数の記載がありません。
そのため、たった数人で手分けして、順番を整える必要があります。
ベンの家に集まった彼らは、必死になって順番を整えます。
ようやく整った文書を元に、早速記事執筆に取り掛かり、そこから校正、そして印刷へと奔走します。
また、同時に法律問題にも直面。
停止を命じられたニューヨーク・ポスト紙ですが、同じ情報源からのリークであれば、ワシントン・ポスト紙も同罪になります。
同じ情報源である可能性が高く、顧問弁護士は掲載拒否を唱えますが、ベンたち現場の人間は断固として聞き入れません。
最終的に、ベンはグラハムの説得に成功。
こうして、チーム一丸となって戦ったことで、ワシントン・ポストの掲載が実現しました。
この一体感と、ハラハラドキドキの展開は、さすがスピルバーグといった感じ。
エンタテインメント作品として、バッチリ仕上がっています。
登場人物の多さに、ちょっと混乱した・・・
物語として抜群に面白く、ちゃんと観ていけば話もわかるようになります。
しかし、冒頭はわりと混乱していました。
●ナヨナヨしたメリル・ストリープが演じている人は、一体何者なの?
●トム・ハンクスが演じている人は、どれくらい偉い人なの?
●ベトナム戦争の場面に登場していたのは、果たして誰?
●ベンが2人いて、ダンもいて・・?
●フィルにフリッツ。似てて混乱する・・・
などなど。
冒頭から登場人物も多く、しばらく「?」が頭の中を巡っていました。
アメリカ特有の皮肉やジョークも、その人物の立ち位置がいまいちわからないために、それが皮肉なのか、本心なのかわからず、混乱することもしばしば。
これから観る人は、最低限キャストくらいは押さえておくと、スッキリ観れるかもしれません、
『ペンタゴン・ペーパーズ』を観ようか迷っている人へ
本作品、日本での評価はそこまで高くない印象です。
映画.comでは3.7点、Filmarksでも3.8点(決して低い訳ではありませんが・・・)
しかし、海外、特にアメリカではかなりの高評価を受けているようです。
たとえば、
●ナショナル・ボード・オブ・レビューでは、2017年の作品賞に選出
(Film of the year=意訳すると、最優秀作品賞)
●アカデミー賞では、作品賞と主演女優賞にノミネート
●ゴールデンクラブ賞では、6つの賞にノミネート
などなど(The Post (film) - Wikipedia 英語版WIkipedia参照)
日本と海外での、この差は何でしょうか。
外国での話だから?
それとも、「報道の自由を守る」ことに対する危機感が薄いから?
アメリカでは、トランプ大統領の就任と同じ年に公開された本作品。
スピルバーグが本作品の上映を急いだのも、そのあたりに理由があるようです。
彼は、初めてこの脚本を読んだ時こう思ったそうです。
「これは2年か3年待ってはいけないー今日伝えなくてはいけない物語だと感じた」
ーThe Post (film) - Wikipedia 参照(和訳は筆者による)
もしかしたら、海の向こうの人たちは、僕らとは違った危機感を持っているのかもしれません。
●実際にアメリカで起こった事件であり、それによって政治が変わったこと
●売れっ子スピルバーグ監督が、このタイミングを選んで映画化したこと
●本場アメリカでは、大ヒットしていること
ということを考えると、まさに今!!!観ておくべき作品です。
もちろん、エンタテインメント作品としても抜群に面白いです(クライマックスでは泣いてしまいました。笑)
社会派映画でありながら、観ている人をちゃんと楽しませてくれるのは、さすがスピルバーグ。
「Amazonプライム・ビデオに登場してからー」ではなく、今観ておくべき1作です。
(というより、すでにベストタイミングは逃してしまっているかもしれません・・・)
『ペンタゴン・ペーパーズ』が好きな人には、こちらもおすすめ!
『ペンタゴン・ペーパーズ』では、グラハムの成長が物語の大きな軸。
それに対して、社会派映画『女神の見えざる手』は、戦うエリート女性の物語。
ロビー活動家(政策を実現させるために、政治家に働きかけをする人のこと)たちの、騙し騙されの頭脳戦。驚きのラストは必見です!
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