失恋の痛手から、時間を止める力を手にした男を描いた作品『フローズン・タイム』を観ました!
一言で言うと、「何とも言えないB級感を漂わせながらも、ちゃんと泣けるラストが待っている感動作」
軽い気持ちで観れるのに、笑いなり、涙ありで、期待以上の内容となっていました。
元々、18分の短編映画だった本作品。
14の賞を受賞し、アカデミー賞でもノミネートされたとを受けて、2時間の長編が作られたそうです。
●主人公が時間を止める力を手に入れる
●裸の女性が写っている映画のパッケージ
これらから、主人公が、その力を己の欲望のために使うのかと想像してましたが・・
アーティストである主人公は、ひたすら美しい女性のデッサンを描き続けます。
これが、またなんとも言えずシュールです。
それでは、期待値以上によかった『フローズン・タイム』をご紹介します!
- 30秒でわかる『フローズン・タイム』のあらすじ(ネタバレなし)
- 『フローズン・タイム』のレビューや感想(ネタバレあり!)
- 『フローズン・タイム』を観ようか迷っている人へ
- 『フローズン・タイム』が好きな人には、こちらもオススメ⬇️
30秒でわかる『フローズン・タイム』のあらすじ(ネタバレなし)
美大生のベン(ショーン・ビガースタッフ)は、失恋のショックから不眠症になってしまいます。
寝れない時間がもったいないので、彼は深夜のスーパーマーケットでアルバイトをすることに。
本来は寝ていて、存在しなかったはずの時間を、アルバイトによってお金に換える。
これが、原題=“Cash Back(キャッシュバック)”の由来になっています。
深夜のスーパーマーケットでは、とにかく時間の流れが遅い!
ゆっくりすぎて、とうとうベンは時間を止める力を手に入れてしまいます(急展開!!)
そんなベンは、美大生としての才能を発揮。
店内にいる女性の服を脱がせ、丁寧にデッサンしていきます。
そんなことを繰り返す中で、ベンはバイト仲間のシャロン(エミリア・フォックス)を徐々に意識するように。
シャロンを意識し始めたその日から、ベンはシャロンのことばっかりを描くようになります。
時間を止める力を得たベンは、不眠症から脱却して、幸せをつかむことができるのでしょうか?
『フローズン・タイム』のレビューや感想(ネタバレあり!)
ここからは、映画を観て思ったこと、感じたことを率直に書いていきます!
多少のネタバレは含みますので、ご了承ください。
興味を引く設定と、あえてその力をフル活用しない主人公
物語の設定としては、なかなか興味深い。
「不眠症になったから、寝れない時間でバイトを始めたものの、そのバイトが暇すぎて、時間の流れが遅すぎて、ある日時間を止める力を手に入れてしまう・・」
この設定だけ聞くと、かなりワクワクします。
ただ、主人公がその力をフル活用して、何か派手なことをやるかと言ったら・・全くやりません。
ただただ、女性の服を脱がせ、丁寧にデッサンするのみ。
(女性の服を脱がせることは、派手といえば派手ですが・・・)
誰もがやりそうな銀行強盗とかをしないところが、逆に主人公の失恋の痛手の大きさを物語っています。
ただ、個人的には、ドキドキする設定とは裏腹に、「うおい!やるのはそれだけかい!」というツッコミを隠しきれませんでした。
深夜のスーパーマーケットの愉快な仲間たち
深夜のスーパーマーケットは、変人の集まりです。
彼らの変人ぶりも、この映画のB級感を助長します。
簡単に、彼ら変人たちについて書いてみます。
●イタズラ好きのアホコンビ
ろくに仕事をせず、いつもふざけあっている2人組みがいます。
いい歳して、店の商品を投げ合ったり、店の中でレースしたり、かくれんぼしたり。
小学生が、そのまま大人になったような2人。
きっと、こういうお店じゃないと雇ってもらえないのでしょうね。
●カンフーの達人風の少年
大前提として、なぜ彼なぜカンフー好きという設定なのか、よくわかりません。
カンフーの力を発揮する場面もありませんし、それで誰かを助けるわけでもありません。
とりあえず、一言も発せず、いつもカンフーっぽいことをやっています。
●自意識過剰なマネージャー
自分のことを有能なマネージャーだと勘違いしている彼。
かつては名サッカー選手だったらしく、その時のトロフィーや写真が部屋にたくさん飾ってあります。
自分が有能であることをアピールしたい気持ちが満々で、いつも偉そうにしてますが、全くの空回り。
その空回り感が通用してしまうような、ちょっと変なお店なのです。
●紅一点のシャロン
シャロンは、唯一まともな人物かと思いきや、彼女は時間恐怖症。
お店での時間の進みが遅すぎて、時計を見ると病んでしまうのです。
そのため、腕時計にはテープを貼って、時間を見ないようにしているほど。
最初は、少し病んでいる女の子っぽく描かれています。
このように、とにかく変人ばかり。
こんな変人たちと過ごしたことが、主人公ベンの頭のネジを狂わせて、時間を止める力を手に入れる一助になったのかもしれません。 笑
伏線をよーやく回収した最後の個展のシーンは涙!
物語の最後の方で、うまくいきかけたベンとシャロンは、ベンの元カノのせいでダメになります。
あくまでシャロンの誤解なのですが、シャロンはベンに言い訳するスキを与えず、2人はバラバラに。
そのしばらく後のこと。
シャロンの元に、1枚の招待状が届きます。
それは、ベンの個展の案内でした。
個展のタイトルは「A Frozen Second」
(日本語訳すると、「止まった(凍った)瞬間」)
その個展に行ったシャロンは、驚きます。
そこには、自分のデッサンばかりが飾ってあったからです。
そう、時間を止めたベンが、ひたすら描き続けた彼女のデッサンです。
久々の再会を果たした2人。
言い訳しようとするベンの言葉を、シャロンはさえぎります。
“Shee. It's ok. This tells me so much more than you could ever say.”
(いいのよ。この絵たちが、どんな言葉よりも、語ってくれているわ。)
ー映画『フローズン・タイム』より(日本語訳は作者による)
●ベンが美大生という設定も、
●ベンが時間を止める力を得たのも、
●その力を得ながらも、ただひたすら絵を描き続けたのも、
●ベンとシャロンが仲違いしたのも、
すべて、この結末を迎えるための伏線だったのかと、感動のあまり涙してしまいました。
好きな人に、言葉ではなく、自分の作品で愛を伝える。
アーティストにとっては、まさに夢のような話ですね。
ただ、どうしてもB級映画感は否めない…
話の設定も面白いし、いろんな伏線が回収される最後の結末も感動的でした。
しかし、そうはいっても、僕の中ではB級映画感を否定できませんでした。
むしろ、B級だという前提で観るのが正解なのかもしれません。
ここでは、どうしても気になったところを、いくつか書いてみます。
●時間を止められる力を得たのに、やけに落ち着いている主人公
「あ、時間止められるようになったわー」程度の反応。驚きが全く無い。
しかも、やることと言ったら、ひたすら女性の裸体のデッサン。
「そんな男いるのか?!」という思いを、最後までぬぐいきれませんでした。
●謎のフットサル試合の意味がよくわからない
途中で、店舗対抗のフットサルの試合が開催されます。
結果的に、相手チームにぼろ負け。店長は大怪我。
少しチームワークが生まれたようですが、感動もなく、物語の本筋にはあまり関係ありません。
唯一、試合の後に、ベンとシャロンが2人きりでお茶する場面があります。
そのシチュエーションを作り出すための試合だったと、言えなくもないですが・・
●「時間を止めてる時に、ベンと同じように動ける人がいる」の伏線の回収は?
物語の後半で、ベンが時間を止めている時に、いきなり逃げ出した人がいました。
そこで初めて、自分と同じように、時間を止められる人がいることが明らかになります。
しかし、そのことについての追求はありません。
そもそも、なんでその人物が逃げたのかもよくわかりません。
伏線の回収があるのかと待っていたら、結局何もありませんでした。
●個展を開催して、いきなり売れっ子になるのは、少し話がうますぎてる…?
最後の個展は、かなり感動します。これは間違いないです。
ただ、ちょっと話がうますぎる気がしたのも確かです。
個展を開くのはさすがにダメだったが、熱意に負けて1枚だけ置かせてもらう。
その一枚を、たまたま通りがかったシャロンが見て・・
とかって展開のほうが、まだ納得感がある気がします・・
(あくまで個人的な感想ですが)
本来、18分にまとまっていたものを、無理やり2時間に引き伸ばしたのだから、いろんなところで無理が生じるのは、仕方ないのかもしれません。
『フローズン・タイム』を観ようか迷っている人へ
この映画は、
「軽い気持ちで観れるけど、笑いあり、涙あり、そしてハッピーエンドな映画がいい!」
そんな気分の時には、まさにピッタリの1作です。
そして、観る以上は、B級映画だと割り切るのがオススメ。
それを理解した上で観れば、十分すぎるほど楽しめます。
ヒロイン演じるエミリア・フォックスも美しいですし。
多少頭の中に「?」が出てきたり、回収されない伏線があっても、気楽に構えることです。
ラフな気持ちで観れて、ちゃんと泣けるハッピーエンドがあるという点では、デートに向いてる映画かもしれません。
ただ、普通に女性の裸が出てきます。バンバン出てきます。時間を止めて、服脱がしちゃってます。
男女で見るときには、そこで気まずくならないかだけ、あらかじめご注意を。
『フローズン・タイム』が好きな人には、こちらもオススメ⬇️
「日常とかけ離れた設定で、気楽に観れて、楽しい気持ちにさせてくれるハッピーエンドな作品」
というところで言うと、こちらの映画もオススメ!
『マスク』
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また、本作品と同じイギリス映画で、最近観た面白い作品はこちら!
『パーフェクト・ルーム』
大どんでん返しのサスペンス作品。
5人しか入れない愛人部屋に、ある日謎の女性の死体が…
つまり、犯人は5人のうちの誰か。
お互いに疑い、疑われの中で、大どんでん返しの結末が待っています…
ゼッタイに!!ネタバレなしで観てください。