※本エントリーは、極力避けるよう努力しますが、多少のネタバレを含みます。ご了承ください!!!
最近、湊かなえブームが来ている。
『Nのために』、『リバース』、そして『夜行観覧車』を現在読んでいる。
物語の面白いスポットに入ってしまうと、時間を忘れて読んでしまう。
先が読めない展開にワクワクし、登場人物たちの物語にどんどん引き込まれていってしまう。
その中で、かなり衝撃的だったのが『リバース』という作品。
ラスト2行での、大大大どんでん返し。
そして、物語の中で幾度となく主人公のアイデンティティーは揺らぎ続け、
最後の最後で、ようやく取り戻すことに成功する。
と思った矢先での、衝撃的エンディング。
衝撃度でいうと、
『桐島、部活やめるってよ』と、
『イニシエーション・ラブ』がコラボしたような印象を受けた。
ごくごく平凡なサラリーマンの主人公、深瀬。
運動ができたり、面白かったり、かっこういい人が覇権を握る学校のヒエラルキー。
深瀬は、全く無縁の世界で生きてきた。
だけど、実は密かに勉強はできた。
勉強がもっとフォーカスされれば、自分はもっとヒエラルキーの上にいるはずだ。
そんな変なプライドを持っている。
だが、現実にはそんな自分のことを理解してくれる友達には出会えない。
輝いている彼らを見て、卑屈になっている。
自分は自分の道をいくのだと、開きなおっている。
そんな彼が、大学のゼミでようやく見つけた、「自分と分かり合える友達」
それが、広沢という人物。
しかし、深瀬、広沢を含めたゼミの5人組で休みに別荘に遊びに行く中で、
広沢は交通事故で亡くなってしまう。
その事故から数年後。
深瀬の彼女宛に、「深瀬和久は、人殺しだ」という手紙が届くところから、物語は展開していく。
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謎の脅迫手紙を送った人物は、広沢のことをよく知っている人物で、
かつ、事故の時一緒にいた自分たちを恨んでいる人物だ、と推理する。
そこで、広沢のことをよく知る人物に当たることで、犯人探しを進める主人公。
しかし、彼のことを知ろうとすればするほど、
自分が知らなかった彼の側面がどんどん明るみに出てくる。
自分は、本当は何も知らなかったことに気づいていく。
結局、心優しい広沢は、自分に合わせてくれていただけなのでは?
親友だと思っていたのは自分だけで、相手は本当には迷惑がっていたのでは?
そんな疑念が頭をもたげる。
「親友」という、契約書もなにもない関係。
それは、お互いがそう思うことによって成り立っている関係。
そう思っていたのは自分だけで、相手にとってはそうではなかった。
主人公の中で、確信がどんどん崩れていく。
このあたりのリアルな心情はかなり生々しく、読んでいて心がグサグサえぐられるようだった。
『桐島、部活やめるってよ』において、
ヒレラルキーの頂点にいる桐島の”不在”によって、自身のアイデンティティーが揺らぎ、慌てふためく生徒の姿と重なった。
桐島と同じグループに所属することによって、自分もヒエラルキーの頂点にいると勘違いしていた人たち。
しかし、最後の最後に出会った、広沢の彼女なる人物。
実は、深瀬の彼女であり、今回の脅迫手紙の仕掛け人でもあった。
彼女は、悪意があったわけではない。
ただただ、事件の真相を知りたかっただけだったのだ。
そして、彼女から聞かされた本当の話。
それが、彼のアイデンティティーを確かなものにしてくれた。
広沢にとっても、深瀬はやっと出会えた、自分の心許せる数少ない人間だったのだ。
犯人探しが、主人公深瀬の自分探しにもつながっていた。
そして、最後の最後にようやく見つけることができた”答え”。
救われたような気持ちになる深瀬。そして、僕。
読んでいて、「ああ、よかった。」という気持ちになった。
犯人探しも、自分探しも無事終わり、ハッピーエンドで物語は終わるのだな。
完全にそう思い、いい話を読んだなーと思っていた矢先・・・・
物語の中で、ずっと繰り返し繰り返し登場してきた伏線が、ここで牙を剥く。
ゼミ仲間4人の中では、広沢の死に対して一番罪が軽いと思っていた深瀬。
彼女から聞かされた衝撃の一言で、立場は一気に”リバース”する。
自分こそが、彼の死の原因を作った人物だった。
ここで、よーやくタイトルの意図がわかる。
ラスト2行での衝撃。
そして、小説の解説にもあったが、
「主人公が実は犯人であった」というパターンの物語はいくつもあるが、
『リバース』においては、主人公自身も、最後の最後にそれに気づく。
何重の意味で、衝撃的な作品だった。