最近、僕の中のブームになっている湊かなえ。
今回は、『夜行観覧車』を読んだ。
おおまかなあらすじは、こんな感じ。
ある二つの家庭の物語。
マイホームに対する憧れが強すぎて、大切なものが見えていない母親と、
母親の勧めで受験をしたものの失敗し、それから卑屈になってしまった娘と、
事なかれ主義の父親と。
家族3人で暮らす遠藤家。
かなりの無理をして、高級住宅街である「ひばりヶ丘」に引っ越してきた彼ら。
そのため、家の大きさは他の家庭の3分の1程度。
週に1回は起こる娘の癇癪は、閑静な高級住宅街中に響き渡っている。
その向かい側に、遠藤家の3倍はある大きな家に住んでいるのが、高橋家。
お父さんはお医者さん、お母さんは美人。
三人兄弟のうち、長男は医学部の学生、長女は遠藤家の娘が落ちた私立女子中に通っており、さらに次男は顔立ちイケメン、運動もでき、有名中学校に通っている。
そんな、一見理想的に見える家庭で、事件は起きる。
高橋家の大黒柱が、奥さんによって殺されてしまう。
一体、幸せそうな家庭内で何があったのか?
残された家族は、これからどうやって生きていくのか?
それぞれの家庭に加え、ひばりヶ丘の昔からの住人、野次馬的な小島さと子というおばあちゃんの3者の視点から物語は進んでいく。
そして、徐々に明かされていく事件の真相・・・
そこから先はネタバレになるので、今回は伏せておくとして。
読んでいて一番に思ったことは、
「一歩間違えたら、どこの家庭でも起こり得る話である」ということ。
自分の家庭でも振り返ってみた。
僕も弟も、実は仮面浪人している。
結果的に2人とも、仮面浪人の末に東大に受かったが、
2人とも受からなかった未来もあったかもしれない。
先日たまたま実家に帰る機会があったので、両親に聞いてみた。
僕「今は兄弟で東大ってことで、周りからすごいとか言ってもらえるけど、
もし、弟と僕が受験に失敗して、仮面浪人した大学に通い続けたら、
2人(両親のこと)の僕らに対する思いとか見方って、変わってた?」
両親「全然(即答!!)」
「なんでそんなこと聞くの?」という顔をしていた。
僕自身も、きっとそんな返事が返ってくるだろうと、密かに思っていた。
『夜行観覧車』の中の大きなテーマとして、
”親の、子供に対する多大なる期待”がある。
しかも、かなり親のエゴの入った”期待”である。
遠藤家では、有名私立女子中学校に行かせたかった母親がいて、
高橋家では、夫と前妻との間の子供が医学部へ行ったのに負けないよう、
自分との間の子供も、同じ医学部へ行かせたかった母親がいた。
そこで、続けて聞いてみた。
(『夜行観覧車』のあらすじを話した上で)
僕:「僕らに対して、どんなことを期待していたの?」
両親:「期待ねー。
確かに、最初は期待してた。可能性はつぶさないようにしようと思ってた。
特に長男(僕のこと)で、初めての子育てで何もわからなかったから、
やることは全部やらせてあげようと思った。
たとえば、ゴミを散らかしても、そこから何か得るだろうと思って、好きにやらせてみたり。
だから、物語の母親の気持ちもわからなくはない。」
両親:「だけど、下もどんどん生まれてきて、そんな場合じゃなくなったのもあるけど。
一番に思っていたことは、自分たちがどうこうというよりも、本人が『やりたい!』と思ったことは、全てやらせてあげようということ。
それがバスケだったら、思いっきりバスケできるようにさせてあげたかったし、
勉強だったら、好きなだけ勉強させてあげられる環境を作ってあげたかった。」
両親:「そこのいい按配ってのは難しいんだけど、あまりこっちから何かを期待することはなかったかなー。
元気で、友達がいて、やりたいことやって、楽しそうにやってくれていたらそれで嬉しかったな。」
聞いていて泣きそうになった。
確かに、僕は今まで、両親に何かを強要されたことは一度もなかった。
兄弟がどんどんふえていったので、そんなに丁寧に構っている暇がなかったのもかもしれないけれど。
基本的には、友達の影響とかもあったけど、
「自分がやってみたい!」という判断軸で、生きてきた。
そして、両親もそれに反対するようなことはなかった。
レベルの高い高校にチャレンジしたこともそうだし
わざわざ仮面浪人したことだってそうだし、
大学に入ってまで、部活やったことだってそう。
あと、その話で一つ思い出したのは、
小学生の頃、通っていたテニススクールの話。
テニススクールは、普通のコースだと月に4回のレッスンで月謝6500円くらい。
だけど『テニスの王子様』という漫画に出会い、本気でプロを目指したくなり。
プロ養成コースみたいなコースに行きたい、と親に直訴した。
試験があるのだが、それに合格すれば参加できるクラス。
それは、練習が週に3回、月謝は約3万円。
たかだか子供の気まぐれだったし、プロになるかもわからないのに、
試験に合格した僕に、親はすんなりオッケーしてくれた。
結果的に身は出なかったし、怪我もあって途中でやめてしまったけど、
あそこでチャレンジできたことそのものが、自分の中で大きな自信になった。
テストにパスしたこともそうだし、そういう環境でテニスをしたこともそう。
努力すれば、ある程度形になるって学べた。
逆に、その時チャレンジできてなかったら、
今でも、その時チャレンジできなかったことを、後悔していたかもしれない。
両親のそういう教育方針のおかげで、僕はここまで好き勝手に、のびのび育ってこれたのだ。
同じようにやれるかはわからないけど、
僕もいつか、子供ができた時には、
本人がやりたいと思ったことは、全てやらせてあげられる自分でいようと、
改めて心に決めた。