四季報は、情報の宝庫。
あの1冊で、上場企業の会社状況がわかるようになります。
しかし、初心者からすると、まとまりすぎていて一見ちょっと分かりにくいです。
そんな人に向けて、初心者でも四季報が読めるようになる入門書がこちら。
四季報は、株式売買のためだけに読むのはもったいないです。
著者はいいます。
なぜ四季報かというと、ここには現代人にとって必要な情報がぎっしりと詰め込まれているからです。
まさに生きた経営や会計を学ぶ絶好の教科書なのです。
たとえ初心者であっても、この1冊を読み終わっている頃には、四季報が読めるようになっているはずです。
それでは、『四季報で学ぶ決算書の読み方』をご紹介します。
『四季報で学ぶ決算書の読み方』どんな本か?
この本は、
「四季報を通して決算書の読み方を学び、会社の経営状態を把握できるようになる」
ための手引書です。
四季報には、上場会社の重要な指標がギュッと詰まっています。
しかし、コンパクトにまとまりすぎているために、初心者にはちょっと難しい。
初心者には高いこのハードルを、この本が越える手助けをしてくれます。
各章の内容について、簡単に見ていきます。
なお、繰り返し読んでもストレスないように、
各章は明確なテーマ分けがされていて、簡単な復習問題もついています。
第1章 決算書を読む前に、必ず知っておかなければならない会社の仕組み
ここでは、
・そもそも会社は誰のものか?
・会社と株主の関係性は?
・子会社との関係性は?
といった、基本のキを学びます。
「株主=会社のオーナー」です。
四季報の【株主】欄から、その会社の特性が見えてきます。
・代表取締役が筆頭株主=オーナー社長が強い権力を持っている
・会社が筆頭株主=大きな親会社がいる
・外国人の持株比率が高い=背後に外資系企業がいる
・機関投資家が筆頭株主=彼らが投資先として選ぶ=経営が安泰な会社である場合が多い
また、四季報の冒頭にある【特色】の欄は、端的にその会社の強みを表しています。
第2章 損益計算書で会社の業績予測ができる
ここでは、損益計算書の読み方から、将来の業績予測する方法を学びます。
四季報【業績】欄には、これまでの業績、及び未来の業績予想が書いてあります。
将来予測は、四季報が予測しているものと、会社自身が予測している2つの数値があります。
この2つの数値の比較から、見えてくることがあります。
・会社予測=四季報予測:このまま信用できる情報
・会社予測>四季報予測:実態よりも、よく見せようとしている可能性がある
・会社予測<四季報予測:慎重な経営者である、もしくは関係者への配慮からあえて低く予測している可能性がある
第3章 貸借対照表で会社の健全性を判断できる
貸借対照表からは、経営の健全性を知ることができます。
単純に、
・自己資本比率=自己資本/総資本
が大きい会社ほど、健全な経営状態にあると言えます。
(ただし、信用がないためそもそも借金ができない等、一概には言えない)
また、
・財務レバレッジ=総資本/自己資本:自己資本の何倍までお金を調達しているか
も1つの指標です。
この数字が大きい=事業拡大の可能性がある、と同時に、経営が傾いた時には一気に危機に瀕する可能性もあります。
第4章 ROAとROAで経営者の能力がわかる
ここでは、四季報にも載っているROAとROEという2つの指標について学びます。
・ROA(Return On Assets)=当期純利益/総資本
・ROE(Return On Equity)=当期純利益/自己資本
つまり、
・ROA=会社の資産から、どれだけ利益をあげられたか?=経営資源を、どれだけ有効活用できているか?
・ROE=投資した株式に対して、どれだけリターンがあるか?
このことから、
・ROA=経営者の視点
・ROE=株主の視点
ということが分かります。
なお、日本ではROEを重視する経営者も多いですが、
借入を起こし、他人資本を増やして利益を上げれば、ROEは向上します。
そのため、むやみにROEを追いかけることは、一概に良いとは言い切れない一面もあるのです。
第5章 キャッシュフロー計算書でお金の流れが分かる
決算書は、いくらでもごまかすことができてしまいます。
それに対して、キャッシュフロー計算書は嘘をつけません。
そのため、会社の真実の姿を見るために使われます。
キャッシュフロー計算書では、実際のキャッシュの動きを追っています。
端的に言うと、
・減価償却費
・売上債権
・支払債務
などは、実際の現金の出入のタイミングと、計上のタイミングが異なります。
そのため、BS/PLだけを追っていると、資金がショートするという自体に陥ります。
それを防ぐため、現金の流れを追うキャッシュフロー計算書があるのです。
第6章 株価指標を理解して投資家目線を身につける
最後のこの章では、株式投資において、投資家が参考にしている指標について学びます。
・BPS(1株あたり純資産)=純資産(自己資本)/発行株数
会社が清算したときに、1株あたりいくらもらえるかの値です。
・PER(株価収益率)=株価/1株あたり純利益=時価総額/当期純利益
株価が、当期純利益の何倍になっているの指標です。
東証一部企業の平均は、「15倍程度」と言われています。
・PBS(株価純資産倍率)=株価/BPS
株価が、1株あたり純資産の何倍になっているかがわかります。
PBS<1ということは、純資産に比べて株価が割安である、ということを示しています。
この本のオススメポイント!
会計の基礎知識も学べる!
四季報を読むためには、大前提として会計の知識も必要になります。
会計学をあまり知らない初心者に向けても、かなり丁寧に書いてあるのが本書の特徴。
各章1つずつ、会計の知識を学んでいきます。
そのため、後から読み返す時も、復習しやすい。
そういった意味では、会計に初めて触れる初心者にも、うってつけの1冊です。
具体的な事例を通して、四季報の読み方がわかるようになる!
四季報は、会社情報の宝庫。
しかし、読む側がそれを使えなければ、意味がありません。
この本では、ただ知識のインプットをするのではなくて、
具体的な企業例を通して、四季報の見方を学べます。
具体例を挙げます。
この本の中では、「東急不動産」と「マクドナルド」の事例が紹介されています。
この本の書かれたタイミング(2015年3月期) では、
・東急不動産:当期純利益は黒字だが、営業CF(キャッシュフロー)が赤字である
という記載があります。
これは、貸借対照表上は資産が計上されているが、キャッシュだけ見えると赤字であるという状態。
原因は、未完成の工事が多く、まだお客さんに物件を引き渡せていないためだと書いてあります。
マンションは、お客さんへ引き渡した時に初めてお金が入ってくるため、まだお金が入ってこない状態なのです。
大手であればまだ大丈夫ですが、これが中小企業であれば、
「黒字なのに、現金が回らず倒産」
ということになりかねません。
気になって、最新の四季報を見てみました。
(この記事の執筆タイミングでは、2018年3月期)
すると、
・東急不動産:営業CFがプラスに転じている
という変化がありました。
わずかこの3年の間に、営業CFが改善したのです。
東急不動産の業績が改善しているという噂を、数字上も確認できたのです。
同様に「マクドナルド」も見てみましょう。
・2015年3月期:当期純利益、営業CFともに赤字
・2018年3月期:当期純利益、営業CFともに黒字
と、業績が大幅に改善しています。
近年、キャッシュレス機を導入したり、メニューも攻めているマクドナルド。
業績改善は、確かに数字上も表れていたのです。
このように、具体的な企業の事例を通して、四季報が読めるようになるのです。
最後に一言!
四季報は、株式投資のために読むだけはもったいないです。
企業の状態を知るために、これほどコンパクトで、ギュッと情報が詰まっているデータベースは他にありません。
但し、まとまりすぎているため、初心者にはちょっと難しい。
そんな人でも、この本を通して1つ1つ学んでいけば、読めるようになります。
会計の知識がある人にとっては、少し物足りないかもしれませんが、
初心者の入口には、最適のテキストです。
四季報を通して会社の決算書が読めるようになると、
・世の中の動向を把握できるようになる
・先読みができるようになる
そのため、
・仕事に活かせる
・会社経営を学べる
・株や投資に役立つ
と、一石何鳥にもなります。
ぜひ、この本を通して、四季報を読めるようになってください!
併せて読みたい!
決算書を読むにあたって、会計の知識があるとなお良いです。
会計をこれから学ぶ人にとって、最適の入門書をご紹介します。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』
言わずと知れたベストセラー本。
「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」といった日常のささいな疑問から、会計の入り口を学べる1冊。
会計学とは?という考え方から学べる良書。
『財務3表一体理解法』
財務3表=BS/PL/CFの繋がりを知るには最適の1冊。
会社を起業したと想定し、事業の動きを1つ1つ、財務諸表上に表していくという形式で学んでいきます。
これ以上ないくらいわかりやすく、優しい内容になっています。