だまん氏のブログ

元不動産屋→現・外資コンサル。人生の先生は本と映画。面白かった本や映画、仕事について、など日々思ったことを好き勝手に書いていきます。

だまん氏のブログ

【書評】『さらば、GG資本主義』藤野英人/日本の未来は、思っている以上に明るい!

ファンドマネージャーとして、これまで6000社以上を見てきた藤野英人さん。

レオス・キャピタルワークス株式会社の代表として、「ひふみ投信」の運営も行なっています。

 

そんな彼が、今の日本社会に警鐘を鳴らしながらも、

「日本の未来は、みんなが思っているほど暗くないぞ!」

ということを唱えている著書がこちら。

 

世界で一番早く、本格的な高齢化が進んでいる今の日本。

 

いまだに団塊の世代が社会で力を握り、

若い世代の躍進を阻む構造への危機感を、データをもとに力説しています。

 

しかし、未来は決して暗くありません。

課題が多いからこそ、最大のチャンスです。

また、国としても、そのチャンスを後押しする流れがきているといいます。

 

この本では、

・今の日本経済が停滞している原因は何か?

・日本社会の明るい兆しとは何か?

・これからの時代に求められる働き方、社会のあり方、個人のあり方とは?

について、述べられています。

 

今の社会を生き抜く全ての人に、手にとってほしい1冊です。 

 

それでは、『さらば、GG資本主義ー投資家が日本の未来を信じている理由』をご紹介します。

 

本書の要約

最初に、この本の概要を簡単に見ていきます。

 

と、その前に。

「GG資本主義」「GG」って、一体何のことか?

 

具体的な明示はないが、「ジジイ」のことだと、作者は仄めかしています。

 

第1章:日本の「GG資本主義」にモノ申す

・日本企業の社長は、60歳以上の人が半分を占める

・個人消費の金額を見ても、60歳以上の人が約50%を占める

・資産の保有率は、金融資産、土地、ともに60歳以上の人が6割近くを占める

  ➡︎つまり、今の日本経済においては、60歳以上の人の存在感がかなり大きい

 

その一方で、

・社長の年齢と株価/売上の成長率を比較すると、

圧倒的に社長が若手(特に30〜40代)の方が、成長率は大きい

 

・「失われた20年」というが、実は上場企業の70%(約1705社)の株価は上昇してる(下落は897銘柄)

・内訳をみると、東証二部上場企業の株価は平均67%上昇してる

・対して、大手一流企業は、マイナス成長の会社が多い

  ➡︎「大企業がダメなら、中小企業はなおのことダメだ」というメディアの偏った報道が、「全ての日本企業がダメだ」という錯覚を生んだ

 

・サラリーマン社長は保身に走る傾向にあるため、企業の成長が止まってしまう 

第2章:今度こそまっとうな「投資」は生まれるか

・先進国の平均株価水準を比較した時に、日経平均だけほぼ成長率0

 

・ 顧客目線が欠けていた日本の金融業界に対して、金融庁長官に就任した森長官による抜本的改革が行われている

 ➡︎その一環である「つみたてNISA」は、個人の資産形成への大きなきっかけになる

 

※つみたてNISAとは・・・

・積立投資をする場合、年間40万円を上限に、最長20年間(つまり、最高で800万円まで)、元本に対する利益を非課税にする制度

 ➡︎通常は、利益に対して約20%が課税される

(40万円を投資して、10万円の利益が出た場合、約20%の2万円が税金として徴収される)

・日本に住む20歳以上の人なら誰でも利用可能 

第3章:「働き方改革」の向かう未来とは

・「日本人は真面目で働き者」と言われるが、仕事に対するモチベーションは先進国の中では最低

 ➡︎真面目=「言われたことをキチンとやる」「時間通りに出勤する」など態度の話では?

 

・ソニーをはじめ、戦後日本を支えた名だたる企業の発展は、「遊び心」があったからこそ

 

・投資とは、「エネルギーを投入して、未来からお返しをいただくこと」である

 ➡︎その最初の一歩は、身の回りのモノやサービスに対して「ありがとう」と言うこと

第4章:各地で生まれつつある「虎」たち

・これからの日本を救う、3つ虎

 ➡︎「ベンチャーの虎」東京など都会で起業する人々

 ➡︎「ヤンキーの虎」地方で、地元に根付いてビジネスを築いていく人々

 ➡︎「社員の虎」会社員という守られた環境をベースに、会社のリソースを使い、顧客のために活躍する会社員

 

・会社員の人でも目指せる「社員の虎」

そのための条件は、

 ➡︎仕事で圧倒的な成果をあげる

 ➡︎顧客から信頼される

 ➡︎会社の中に強力な庇護者がいる 

第5章「多世代共生社会が切り開く未来」

・マッチョ系経営者とは違った、新しい世代の起業家の登場

  ➡︎物欲よりも、経営そのものへの集中力が高く、情報収集能力にも長けている

  

・これからの起業は、新しく塔を建てるのでなく、「穴を見つけて埋めること」

 ➡︎課題の多い日本だからこそ、チャンスがある

 

・大手企業の中にも、柔軟に変化しようとしてる企業はたくさんある

 ➡︎メタボ体質からの無駄削減なので、少しの効率化で大幅なコストダウンとなり、成果が出やすい

 ➡︎このような前向きな動きは、日本各地で起きている。ただし、メディアがその存在に気づいていないだけ

 

・自分の好き/嫌いの感情をはっきりさせること

 ➡︎「楽しさ」の中に真のクリエイティビティが生まれ、新しい価値を創出していく

 

書評・感想

ここからは、本書を通して、僕なりに感じたことを書いていきます。

情報を正しく取得することの大切さ

本書を読んで1番の感想。

それは、

「今の日本は、思っていたより、全然悪くない」

ということです。

 

本書にも書いてありますが、

失われた20年で、7割近くの上場企業の株価が上がっているのです。

そして、面白いことに、大企業ほど停滞しています。

 

実態をきちんと見れば、一目瞭然。

しかし、メディアが取り上げ、話題にするのは大企業だけ。

 

その情報を、ただただ鵜呑みにしていました。

 

しかし、考えてみると、

僕ら平成世代の多くは、リーマンショック後に社会に出ています。

どん底を抜けて、どちらかというと経済が上向きの時代です。

 

僕自身で考えても、毎年給料は上がっているし、ボーナスの額も増えている。

経済は上向いている、という感覚を持っています。

 

メディアの力は、すごいです。

自分の感覚よりも、メディアの言葉を鵜呑みにしてしまっていました。

 

メディアが悪なのではありません。

 

正しく情報を掴み、自分で考えること。

その大切さを、再確認しました。  

起業とは、「穴を見つけて、埋める作業である」

もう1つ、印象に残った言葉。

それは、

「起業とは、塔を建てることではなく、空いている穴を見つけて、埋めていくこと」

です。

 

起業というと、

・何か大きなことを成し遂げる

・ものすごいエネルギーを投じる

そんなイメージです。

 

モノが溢れたこの時代に、どんな新しい消費ニーズがあるのか?

それを見つけるのは、ちょっと難しい。

 

しかし、課題が多い今の日本社会。

だからこそ、

「今、誰かが困っていることは何だろうか?」

「これって、困る人いるだろうなー」

アンテナを張るだけで、そういうことは、たくさん浮かんできます。

 

それを改善すること。

困っている誰かの役に立つこと。

 

そうやって発想していくことから、新しい事業が生まれていく。

 

そうやって考えると、やれることはずっとずっと広がってきますよね。 

結局、「好き・嫌い」をはっきり持つことが大事

いろんな自己啓発本にも書いてありますが、

「自分の好き嫌いをはっきりさせること」

改めて、これが大事なのです。

 

藤野さんはいいます。

あらゆることを、まず「好き・嫌い」から考えるくせをつけると、自分の快・不快の感情、やりたいこと・やりたくないことの基準がだんだんわかってきます。

その延長線上に、あなたの夢や思想があるのです。

まずは、自分の感情のあり方に目を凝らすこと。すべてはそこから始まります。

今の若い世代は、いわゆる「いい車、いいアクセサリー、いい暮らし」

そういったものへの執着が、あまりありません。

 

共通の、わかりやすいステータスへの執着がありません。

 

そのため、いい意味で各々の「好き・嫌い」を持ちやすくなった時代だと感じます。

 

「それの何がいいの?!」

という、自分なりのこだわりを持った人が許される時代です。

 

 

1つ、面白い話があります。

 

弟(高校生)の文化祭の出し物は、脱出ゲームでした。

そのゲームの発案者は、たった1人の生徒だったそうです。

 

発案者の彼はどちらかというと根暗で、決して友達も多くないようです。

 

しかし、彼はゲームや物語を考えるのが好きみたいで、

文化祭の出し物の企画の時に、

たった1人で、あっという間に脱出ゲームの下地を完成させてしまったそうです。

 

それがあまりに完成度高く、そのまま採用になったそうです。

 

高校という、ヒエラルキーがかなり顕著な空間。

僕らの世代でいうと、

「運動部で、かっこよくて面白い」

そういった人が発言権を持っていて、

目立たない生徒の意見は、あまり尊重されませんでした。

 

そのため、弟のその話を聞いて、「すごくいいなー」と感じました。

 

僕ら以上に、個性を尊重する世代の到来を予見させてくれるエピソードです。

 

「みんながこうだから」という価値観が崩れてきた今だからこそ、

自分の「好き・嫌い」をはっきり持った人が、メキメキ頭角を現していくように感じます。 

 

『さらば、GG資本主義』に一言!

「課題が多いからこそ、チャンスである」

この本の中で、しきりに出てきた言葉です。

 

この本は、当初の構想から、完成までに2年ほどかかっているそうです。

 

最初は、日本社会の暗い現状に対して、警鐘を鳴らすのが目的でした。

 

しかし、日本社会が良い方向へ変化していく様子を見て、どんどん中身を変えていき、今の内容になったそうです。

 

この本を読めば、わかります。

これからの日本社会は、決して暗くありません。

 

まだまだ課題も多いですが、

個人で、団体で、地域で、そして国で、

少しでも今の社会をよくしていこうという流れは、確かに起こっています。

 

今の日本社会に、どうしても希望を持てない人へ。

 本書を手に取ってから、もう一度自問自答してみてください。

 

これからの日本と、自分の未来に、

思いがけず、希望をもてるようになっていることでしょう。

 

併せて読みたい!