だーまんのブログ

平成生まれ・東大卒の不動産屋。人生の先生は本と映画。面白かった本や映画、ライフハック術、不動産のこと、受験についてなど、日々思ったことを好き勝手に書いていきます。

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【レビュー】『プラトーン』ベトナム戦争のリアルを描いたアカデミー賞作品

午前十時の映画祭で『プラトーン』を観てきました!

 

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第59回アカデミー賞作品賞を受賞。

監督オリバー・ストーン自身の、ベトナム戦争の従軍体験を基にしています。

 

戦争のリアルを追求した作品。

 

そのため、よくある映画と違い、

明確な善と悪、感動的なストーリーはありません。 

 

にも関わらず、心に残るのものがあります。

戦争への嫌悪感や、悲しさとはちょっと違う。

 

戦争って、何だろう。

従軍した人たちは、何を思っていたのだろうか。

 

戦争が他人事の僕らに、リアルを戦争体験をさせてくれる映画です。

それでは、映画『プラトーン』をご紹介します。 

 

なお、本記事執筆にあたり、映画評論家・町山智浩さんのこちらの著作を参考にしています。  

この本では、

・『ビデオドローム』デヴィッド・クローネンバーグ

・『グレムリン』ジョー・ダンテ

・『ターミネーター』ジェームズ・キャメロン

・『未来世紀ブラジル』テリー・ギリアム

・『ブルーベルベッド』デヴィッド・リンチ

・『ロボコップ』ポール・ヴァーホーヴェン

・『ブレードランナー』リドリー・スコット

についても書いてあります。

 

監督の生い立ち、作品が生まれた背景、作品の解説などがてんこ盛り。

「映画って、こんなにも奥深いんだ」と感動します。

 

映画好きだけでなく、「この映画の意味がよくわからなかった」という人には、オススメの1冊です。

 

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『プラトーン』のあらすじ

タイトルである「プラトーン」は、50人程度の小隊のことです。

 

大学を中退した主人公クリス・テイラー(チャーリー・シーン)は、

自ら志願し、ベトナムの戦地へ赴任します。

 

現地に到着した彼を待っていたのは、自分たちと入れ替わりでヘリに乗る死体袋。

 

いきなり、現実を突きつけられるクリス。

 

彼は、カンボジア国境に近い陸軍第25歩兵師団の小隊に配属。 

ハリス大尉の下に、エリアスとバーンズという2人の軍曹。

 

同じ隊には、黒人や訛りのひどい英語を話す白人たち。 

中流階級のクリスにとって、触れ合ったことのない人々。

 

戦地の悲惨な状況を見て、早くも来たことを後悔するクリスだったが、

彼は少しずつ、兵隊らしくなっていきます。

 

それと並行して、戦争自体もどんどん深みに入っていき・・

 

『プラトーン』への批評と少しの解説

ここからは、映画『プラトーン』の補足的な説明と、批評・感想を書いていきます。

なお、多少のネタバレは含みますので、まだ観ていない人はご注意ください。

長い道のりだった『プラトーン』映画化までの話

監督であるオリバー・ストーンは、名門イェール大学へ入学。

しかし、勉強に全く意味を見出せず、自ら志願して戦地へ赴きます。

 

主人公クリスと全く同じ。

 

そう、この作品は、監督自身の戦争験が基になっているのです。

映画に出てくる人々も、実際の人物をモデルにしています。

 

映画の公開時に、雑誌の企画で、モデルになった人々に会いに行ったそうですが、

みんな社会復帰できず、社会の底を這うような生活をしていたそうです。

 

それは、オリバー・ストーンも同じでした。

除隊後、うまく社会復帰ができなかった彼は、

ドラッグに溺れ、自堕落な生活を送っていました。

 

そこから脱却するために、リハビリとして脚本を書き始めます。

帰還兵が優先的に入学できる制度を使い、ニューヨーク大学へ入学。

かの有名なマーティン・スコセッシ監督に、映画を学びます。

 

実は、『プラトーン』の脚本自体は、1970年中頃には書きあがっていました。

なんと、公開の10年近く前のことです。

 

しかし、アメリカ社会が戦争の傷から癒えていないために、

そのタイミングではどこも協力してくれず、映画化は実現しませんでした。

 

その後、1970年代後半にベトナム戦争を描いた『ディア・ハンター』『地獄の黙示録』が公開されますが、

オリバー・ストーンは、映画のリアリティのなさに嫌気がさします。

 

そして1986年に、初稿から10年の時を経て、ようやく映画化が実現。

 

戦争をあまりにリアルに描いたため、失敗すると考える人は多かったそうです。

 

結果は、低予算にもかかわらず、予算の20倍を超える大ヒットを記録しました。

ベトナム戦争のリアルを描いた作品 

映画を観て1番印象に残るのは、そのリアルさです。

 

わかりやすい善と悪や、感動的なストーリーはありません。

 

リアリティの追求のため、キャストたちは実際に兵士の厳しい訓練を受けてたそうです。

あまりに厳しさに、彼らは日に日に痩せこけていきます。 

 

映画中の彼らの疲れた目は、本当に疲れていたのです。笑

 

映画は、終始主人公や登場人物の視点で進行します。

そのため、戦争の全体像が全く掴めません。

 

しかし、それが監督の狙いのように思えます。

 

ベトナム戦争の目的は、南ベトナムの人々を共産化から守ること。

しかし、米軍が戦っているのも、味方しているのも、同じベトナム人です。

 

彼らには、「何が目的で、何が勝利なのか」もはやわからなくなっていきます。

 「ここは、道理が通らない場所だ」と、主人公もいいます。

 

 

それを象徴するような出来事が、劇中に起こります。

 

敵の攻撃で、部下が殺されたバーンズは、ひっそりと男泣きします。

その怒りは、同じベトナム人に向けられます。

 

彼は、たまたま見つけた無実の村人たちを殺し、村を焼き払ってしまいます。

彼の中で、もはや敵か味方かの線引きはなくなっていたのです。

 

ちなみに、このシーンは実際に起こった「ソンミの虐殺」をベースにしているそうです。

 

 

そもそも、アメリカが戦争介入するきっかけとなったトンキン湾事件は、

介入の口実を作るための、アメリカ側の仕業だったことが明らかになっています。

 

最初から、作り上げられた戦争だったのです。

それは、現場にいた彼らが、一番感じていたこと。

 

そのリアリティが、観ている僕らにもジンジン伝わってきます。

エリアスとバーンズ:2つの正義

映画の中で、象徴的に対比される2つの正義。

2人の軍曹、エリアスとバーンズ。

 

正義のエリアス/悪のバーンズに見えますが、

物事は、そう単純に割り切れません。

 

戦争の大義を最後まで貫いたエリアス。

(ちなみに、モデルとなった人物は、好戦的なアパッチ族の末裔だったそうです)

 

彼は、無実の民間人を殺すバーンズを見て、殴りかかります。

極限状態でも、彼は戦争の本来の目的を忘れていませんでした。

 

では、対するバーンズは悪なのか?

彼にとっては、仲間を守ることが正義でした。

無実のベトナム人を殺すことは、彼にとって仲間を守ることだったのです。

(実際、南ベトナムの人々の中に、北ベトナムのシンパも多かったそうです)

 

 

2人の最後も、象徴的です。

 

口封じのために、味方であるバーンズに撃たれるエリアス。

瀕死の状態で、敵の歩兵から逃げる彼ですが、最後は蜂の巣状態に撃たれてしまいます。

まるで、アメリカン・ニューシネマの『明日に向かって撃て!』『俺たちに明日はない』の主人公たちのように。

 

最後の最後、銃撃に倒れた彼は、両手を天に向けて突き上げます。

映画の表紙にもなった、あまりにも有名すぎるポーズ。

まるで、天に召されているかのよう。

  

象徴的ですが、美しい最後を迎えます。

 

対するバーンズは、クライマックスの銃撃戦で大怪我を負います。

瀕死状態の彼を、たまたまクリスが見つけ出します。

 

バーンズに促されたクリスは、彼に最後のトドメをさします。

あれだけ強かった男の、あっけない最後。

エリアスのそれと比べて、あまりにも現実的な死に際でした。

 

  

映画の最後、主人公の独白で、

「エリアスとバーンズ、2人の父の子供のようだと感じる」

と言っています。

 

理想を追いかけたエリアスと、現実の中で戦ったバーンズ。

 

わかりやすい善悪、道徳が存在しないリアルな戦争の姿が、

2人を通して見えてきます。

 

『プラトーン』に一言!

アメリカが大敗したベトナム戦争ですが、

良かったことの1つに、人種を越えた交流が生まれたことがあります。

 

オリバー・ストーン自身も、劇中のキングとその後親友同士になったそうです。

 

映画の途中、白人も黒人も一緒になって、

ドラッグをキメながら、音楽に合わせて楽しく踊るシーンがあります。

束の間の休息。

その時のみんなの表情が、ものすごく楽しそう。

 

このシーンは、激しく、かつ緊迫する戦いが続く中で、

少しだけ、心の緊張を和らげてくれるシーンです。

 

リアルな戦争体験だからこそ、映画の中に希望はほとんどありません。

しかし、そんな悲惨な状況でも、彼らは肩を抱き寄せあって、必死に生きていました。

明るく振舞っている彼らから、人間の生命力を感じたシーンでした。

 

 

ドイツ帝国の宰相、ビスマルクの有名な言葉があります。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

 

この映画は、ベトナム戦争を体験した監督だからこそ撮れた作品です。

 

戦争は、いつまでも他人事であるとは言い切れません。

今でも世界のどこかで起きているし、

いつ自分たちの周りで起こるかもわかりません。

 

戦争の、リアルを知るために。

ぜひ、『プラトーン』を観てみてください!

 

併せて読みたい!

『タクシー運転手 約束は海を超えて』

韓国で実際に起こった光州事件を扱った作品です。

独裁政権が続いていた韓国。

光州で、軍による民間人弾圧事件が起こります。

しかし、政府は徹底的にそれを隠蔽します。

その事実を暴き、世界に報道したのは、1人のドイツ人ジャーナリストと、彼を命がけで現地に届けた1人のタクシー運転手だったのです。 

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