東野圭吾さんの『超・殺人事件ー推理作家の苦悩ー』を読みました!
推理小説を書き続けるのって、素人が見ても簡単ではないと思います。
そんな推理小説家のリアルな苦悩を、ブラックユーモア混じえて描いた本作品。
短い8編の物語は、全てにとんでもないオチが待っています。
クスリと笑うこと間違いなしの本作品を、ご紹介します!
『超・殺人事件』の簡単なあらすじ(ネタバレなし)
8つの短編集からなる本作品。
それぞれの物語について、簡単に解説します!
超税金対策殺人事件
小説での印税をあてにしていたある作家は、自分たちの納税額の多さに驚きます。
彼は、税理士の友人にアドバイスを求めます。
その税理士のいう通りに、本来であれば経費にならない支出(ハワイ旅行、エステなど・・笑)を、巧妙に小説の中に組み込み、経費として節税することにしたのだが・・・
超理系殺人事件
中学校で理科を教えており、自称理系の主人公は、本屋で『超理系殺人事件』という本を目にします。
開くと、難解な理系用語のオンパレード。
読み進めるのに一苦労だが、自称理系人間として、譲るわけにはいかない。
主人公は、必死になって読み進めるのだが・・・
超犯人当て小説殺人事件(問題篇・解決篇)
大物推理小説家の家に招かれた4人の編集者たち。
そこで作家から告げられたのは、
「ここにある推理小説の犯人を当てることができたら、その人の出版社から次の作品を出版する」というものだった。
是が非でも本を出版したい4人の編集者たちは、必死になってその小説の犯人探しをするのだが・・・
超高齢化社会殺人事件
日本人の本離れが進み、作家として食べていくのが難しくなった日本。
作家を志さす人がいなくなったことで、必然的に若い頃に売れた作家たちが、そのままスライドして高齢化していきます。
それと同じく、読者層も昔から変わらないため、読者の年齢も必然的にスライド。
高齢化した作家が書いた作品を、高齢化した読者が読むという世の中になってしまい・・・
超予告小説殺人事件
ある作家の書いた連載小説通りに、現実の世界でも殺人事件が起こります。
最初はただの偶然だと思っていたが、それが2回、3回と続くうちに、偶然では済まされなくなってきます。
すると、ある日殺人犯から作家宛に電話がかかってきます。
彼は、次の連載での殺し方の指定をしてくるのでした・・・
超長編小説殺人事件
小説は、長いことが最大の売りとなった時代。
編集者に言われるままに、なんとか枚数を増やすために、書いた物語を必死に脚色していくのだが・・・
魔風館殺人事件(超最終回・ラスト五枚)
ある連載のラスト五枚。
作者の心の声とともに物語は進みます。
風呂敷を広げすぎて、どう結末に持っていけばいいのかわからないまま、筆を進める作者であったが・・・
超読書機械殺人事件
ある書評家のもとに、「ショヒョックス」という機械を持ったセールスマンが現れます。
その機械は、どんな小説でも即座に書評を書いてくれるというもの。
しかも、書評のレベルも「甘口」や「酷評」と選べるといいます。
早速その機械を使い始めた書評家だったが・・・
『超・殺人事件』のレビューや感想(ネタバレあり)
ここからは、この作品のレビューや感想を書いていきます。
多少のネタバレは含みますので、まだ読んでいない人はご注意ください!
推理作家ならではの苦悩に対するブラック・ユーモアのオンパレード
推理作家が、推理作家の苦悩を毒舌で描いた本作品。
内部の事情を知っているだけに、どれもリアリティがあります。
●税金対策に、経費にならないものを無理やり小説の中に登場させて経費とする
●作家も読者も高齢化したため、新しいテイストの作品よりも、今までのようなモノが好まれるようになってしまう
●枚数を稼ぐために、どうでもいいディテールをやたらと脚色してみる
●風呂敷だけ広げてしまって、結局うまくまとめることができず苦労する
●書評を書くのが面倒で、いっそ機械にさっと出してもらいたいという願望を持つ
推理作家としての、こういった日常のささいな苦悩や愚痴が物語のもとになっていると思われます。
それを、ブラック・ユーモア満載で描ききっているのがかなり清々しいです。
全ての物語に読者を裏切るオチが待っている!
短編だからといって、甘く見てはいけません。
たった数ページの中できちんとオチまで持ってくるのは、下手な長編よりも難しいはずです。
「魔風館殺人事件」など、たったの4ページの中にオチがあります。
どの作品のオチも、間違いなく読者の期待を裏切ってくれます。
「これはどんなオチがあるのだろうか?!」と、予想しながら読むのが楽しいですね。
短編だからこそ、作家としての力量を感じさせてくれる!
短編にこそ、作家としての力量が如実に表れます。
短編小説なので、登場人物を長々と描写している暇はありません。
短いページの中で、的確に登場人物や背景を描き、違和感なく物語に入り込ませてくれるのはさすがです。
このあたりは、本作品より10年前くらいの作品(『俺は非常勤』など)を読むと、よりはっきりと違いがわかります。
その頃の作品を何冊か読みましたが、物語にうまく入り込むことができず、途中で挫折してしまった作品もいくつかあります。
短く無駄なく、しかもオチまでちゃんとつけて物語を描いているところに、作家としての力を感じさせてくれる作品です。
東野圭吾さんの『超・殺人事件』に一言!
本人が感じているだろう推理作家としての苦悩を、ブラックユーモアを混じえて描いた本作品。
全てに大どんでん返しのオチがあり、どれも予想がつきません。
長編小説だと1回しか味わえないこのドキドキと驚きを、単純に8回味わえるのが醍醐味です。
星新一さんのショートショートを思わせる本作品。
ぜひ、『超・殺人事件』読んで、8回驚いてください!