だまん氏のブログ

元不動産屋→現・外資コンサル。人生の先生は本と映画。面白かった本や映画、仕事について、など日々思ったことを好き勝手に書いていきます。

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【書評】『軽くなる生き方』松浦弥太郎/人生の棚卸しをしたい時に

『暮らしの手帖』編集長の松浦弥太郎さん。

高校を中退後、一人アメリカへ旅立ち、そこで出会った本をフリーマーケットで売りながら、物書きになり、その後『暮らしの手帖』編集長になるという異色の経歴の人物です。

一見自由な生き方をしている彼の『軽くなる生き方』という本を読みました。

 

冒頭、2つの問いから本書は始まります。

あなたは、余計な荷物を背負っていないだろうか?

シンプルに、身軽に生きていけると断言できるだろうか?

物理的にも、精神的にも、いろんなものを抱え過ぎていたと感じた僕は、

この冒頭を見て買うことを決めました。

 

この本の2つの効能について、このように書いてあります。

一つは、人生の棚卸しをし、身軽になるためのヒント。

もう一つは、「これさえあれば大丈夫」という人生の知恵だ。

(中略)

身軽に生きるためには「これがあれば安心」という万能の薬も必要だと思う。 

人は、生きていく中で、ついつい何かを抱えすぎてしまいます。

 

荷物を持ちすぎたと感じた時に読みたい1冊、

松浦弥太郎さんの『軽くなる生き方』をご紹介します。

 

『軽くなる生き方』はどんな本か?

単身で渡米し、見つけた本を路上で売るところから始まり、

中目黒に自分の本屋さんを開き、物書きをしながら、『暮らしの手帖』の編集長にもなった松浦弥太郎さん。

 

彼は、40歳を前にしたときに、あまりに多くのものを抱えすぎたことに気づき、

人生の棚卸しをし、自分をゼロ設定する必要があると感じたそうです。

 

その時に、彼がどんなことを考え、物事を整理していったか。

削ぎ落としていった時に、残ったのものは何だったのか。

 

本書は、

 

第1章 「あたりまえのこと」を大事にする

第2章 仕事で生かす、生かされる

第3章 「自分の根っこ」を見つめ直す

第4章 これからの人生は、身軽がいい

 

という4章立てで、「軽くなる生き方」について考えていきます。

 

具体的な断捨離の実践方法というよりも、心構え、考え方に重点が置かれています。

壮絶な人生で、何を経験し、そこから何を学び、何を実践していったのか。

彼の人生哲学を学べる1冊となっています。

 

心に響いたところ

読んでいて、心に響いた箇所をご紹介します。 

身軽になるために、本は3冊しか持っていない。

本屋を経営している彼ですが、本はなんと3冊しか持っていないそうです。

その3冊とは、

『高村光太郎詩集』高村光太郎

『北回帰線』ヘンリー・ミラー

『路上』ジャック・ケルアック

 

本屋を経営しているにも関わらず、たったの3冊です。

繰り返し読むこの3冊以外は、所有しないようにしているそうです。

 

これを聞いて、僕自身も本を整理したら、

あっという間に、30冊くらい捨てることができました。

 

「なんとなく」買ってしまって、知らずのうちに溜め込んでいたことに気づけました。

いくつになっても「初々しさ」を忘れないこと。

松浦さんは、アメリカから帰ってきた後、古本を売りながら、生きていくために肉体労働をしていたそうです。

 

厳しい労働現場の下っ端。

そこで彼は、どんなにきつい現場に行っても、必ず元気よく仕事をすることを信条にしていたそうです。

仕事はもちろんのこと、仕事以外の頼まれごとも、元気よく挨拶してやっていたそうです。

それを続けるうちに、現場の人から「松浦」と、名前で呼ばれるようになり、

より大きな仕事を任せられるようになっていったそうです。

 

大事なことは、この「初々しさ」です。

いくつになっても、「初々しさ」を忘れない人がいます。

かたや、自分も20代後半になり、いつの間にか分かった風になっている自分がいました。

「初々しさ」を持つことを、恥ずかしいと思うようになっていました。

 

松浦さんの次の言葉は、そんな自分に対して言われているようでした。

何歳になっても、どんな仕事や立場だろうと、「初々しさ」は必要だ。

若さと初々しさは、イコールではない。まだ駆け出しの新人なのに初々しくない人もいれば、経験を積んだベテランでもなお、初々しい人もいる。

好きになってもらうことから始める。

これと似た箇所に、「好きになってもらうことから始める」というのがありました。

 

帰国後、彼は仕事のために、電話でアポを取っていたそうです。

電話のアポだと、100人電話して、1人会えればマシなほう。

 

やっと会えることになった1人に対して、松浦さんはどうしていたか。

彼はいきなり営業するのではなく、

まず「相手に好きになってもらうこと」を徹底的に意識したそうです。

 

いきなり営業されるのは、誰に取ってもイヤなもの。 

自分を好きになってもらえれば、「コイツ面白い」となって、次につながっていく可能性があります。

 

仕事は、結局人と人の繋がりです。

何かお願いしたいことがあった時に、コイツにお願いしたい、声かけたいと思う人に依頼します。

 

人は、機械ではありません。

ブスッとしている人より、「はい!」と元気よく挨拶する人にお願いしたいものです。

初々しく振る舞い、好きになってもらうことから、彼の仕事はうまく回っていったのです。

近道が全てではない。無駄だと思うことは、いつか宝物になる。

松浦さんは高校を中退後、逃げるようにアメリカへ。

大きな野望があったわけではなく、現場から逃げたくて、必死にお金を貯めて渡米したそうです。

 

何もアテがないので、彼は仕事をしながら、ギリギリの生活を送ります。

その時に、「お金がかからないから」という理由だけで、街中の古本屋を巡っていたそうですが、

それが、結果的に仕事に繋がっていったそうです。

 

苦しくてギリギリの生活をしていたことが、

後から振り返ると、宝物になったそうです。

 

少し長いですが、松浦さんの言葉を引用します。

たくさんの人が、近道を探す。手っ取り早く成果が出る、可能な限り効率のいい道を取ろうと、あせっている。

(中略)

たくさんの人が、足踏みを嫌う。

(中略)

先が見えない不安は大きなものだし、友だちがいないどころか、自分すら信用できない毎日は地獄だ。

(中略)

だが、だからこそ僕は思う。

無駄な時期に詰め込んだガラクタこそ、いつか宝物に変換される時が来ると。

(中略)

それでも、僕はその無駄をすっ飛ばして、一足飛びにクリアできる飛行機に乗りたいとは思わない。

ただひたすら無駄な出来事を、引き出しに詰め込む一時期もあっていいのだと、信じているから。

未来がハッキリとは見えず、足踏みしていたと感じた僕にとって、

大きく胸を打つ言葉でした。 

物事をとにかくシンプルにする。

松浦さんが常に意識していることは、

「物事をできるだけシンプルにすること」だそうです。

複雑化しないように、シンプルに、シンプルに。

ものごとが複雑化してくるたびに、僕は「どれだけ単純化できるだろうか?」と考え、研究し、自分のルールブックを更新している。

たとえば、部屋の整頓状態と、頭の思考は一致するそうです。

雑然と散らかっていると、その人の頭の中はゴチャゴチャ。

逆に、部屋を綺麗に整えると、思考がスッキリ整理される。

 

生きていくと、どうしても大切なことを忘れてしまいます。

そのために、毎日時間を作って、頭の整理をすることも大事な習慣にしています。

 

何か新しいジャッジをする時に、頭の中がゴチャッとしていると、

正しい判断をするのは難しいです。

スピーディーな世の中に生きているため、物事をシンプルに、常に頭の中はスッキリさせて起きたいと常々考えています。

 

最後に一言! 

僕は、松浦さんの本がすごく好きです。

それは、彼がとても「人間臭い」からです。

 

松浦さんは、「人間は、本来弱いものだ」というところから発想を始めています。

 

どこぞの成功本のように、「とにかく成功をイメージして行動あるのみ!」というスタイルとは真逆です。

 

人は落ち込むこともあるし、悩むこともあるし、不安になることもあります。

そんな僕たちを、彼は丸ごと肯定してくれます。

肯定した上で、「だから、こうしたらどうかな?」という提案をしてくれます。

彼の言葉は、とにかく優しくて、温かい。

だからこそ、ちょっと人生に迷った時は、

救いを求めて、彼の本に逃げ込みたくなります。

 

人は、肯定してもらいたい生き物です。

否定してもらいたい人なんていません。

肯定してもらえたら、そこからまた一歩、踏み出してみようかなって思えます。

 

ちょっと人生に行き詰まったなって思ったら、ぜひ本書を手にとってみてください。

きっと、心が軽くなって、一歩を踏み出す勇気をもらえるはずです。

 

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