だまん氏のブログ

元不動産屋→現・外資コンサル。人生の先生は本と映画。面白かった本や映画、仕事について、など日々思ったことを好き勝手に書いていきます。

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【書評】『疲れすぎて眠れぬ夜のために』内田樹

いろんなことがうまくいかなくて、疲れすぎて眠れない夜。

そんな時に、読んでほしい1冊です。

 

巷に溢れる成功本。

「自分らしく、成功しよう!」

「大好きなことだけやって、生きていこう!」

「今こそ、かっこいい女性が活躍する時代!」

 

そんな煽り文句の中に生きていると、無意識のうちに、

「もっともっと上を目指そう!!」

と、力んでしまうのも仕方ありません。

 

だけど、それって本当に一番大事な生き方なのでしょうか?

 

この本は、

「ワンランク下の自分でも、いいんじゃない?」

「大きな成功だけでなく、目の前の小さな幸せを大事にできることも、才能である」

ということを、教えてくれます。

 

頑張りすぎて、追い込まれて周りが見えなくなった時に、

立ち止まるきっかけをくれる1冊です。

 

それでは、『疲れすぎて眠れぬ夜のために』をご紹介します! 

 

『疲れすぎて眠れぬ夜のために』はどんな本か?

この本には、具体的にどんなことが書かれているか?

本書の「終わりに」と、「文庫本のためのあとがき」より、そのまま引用します。

この本で私が繰り返し申し上げたのは、「無理はいけないよ」「我慢しちゃダメだよ」ということです。

「あんまり自分が立てた原理原則なんかに縛られないで、その場の気分に乗って、気楽に生きましょう」

 

要するに、

「ちょっと肩の力を抜いて、気楽に生きましょうよ。」

ということを教えてくれます。

 

以下、本書の内容を、僕が響いた箇所を中心にかいつまんでご紹介します。

 

Ⅰ 心を澄ます

・向上心は、必ずしも持つ必要はない。

・自分の可能性は有限であると知ること。そのことによって、自分の可能性を最大限活かすことができる。

・嫌な人間関係の中で、無理に戦う必要はない。

 

Ⅱ 働くことに疲れたら

・「手を抜く」ことは、意外と訓練していないと難しい。

・「へらへらと質の高い仕事をする」ということができないと、プレッシャーに負けてしまう。

・女性のサクセスモデルには、上記のことを言う人がまだいない。そのため、精神的に苦しんでいる女性が多いように見受けられる。

 

Ⅲ 身体感覚を蘇らせる

・「個性的」だと思っていることも、95%くらいは「既製品」である。

・自分の立ち位置を正確に把握できないため、狭い世界で自分は「個性的である」と考えている。

・武道における「守破離」のように、まずは形から入ること、そしとその形の意味を考えるところが始まりである。

 

Ⅳ らしく生きる

・個性個性と叫ばれているが、分相応=「らしく生きる」ことが見過ごされている。

・「らしく生きる・振る舞う」ことは、不条理な世の中を生きていく上で、自身の首を絞めるリスクを最小限に減らすことに繋がる。

 

Ⅴ 家族を愛するとは

・一夫一婦制は破綻しかけているが、それでも一人の信頼できるパートナーと一生添い遂げる方が、生存戦略上のコスト的に有利なので、今も制度は続いている。

・社会の構成員の欲望を均質化しようとする資本主義の登場で、それまでの「らしさ」が失われていった。

  

この本の魅力とは?

当たり前のことを、再確認できる

別の本から引用しますが、内田樹という人の本が面白いのは、

あまりに(非)常識的であるがゆえに、これまであまり言われないできたことだけれど、そろそろ誰かが『それ、(非)常識なんですけど』とキッパリ言わねばまずいのではないか」

ー『ひとりでは生きられないのも芸のうち』内田樹 より引用

 という話を、扱っているためです。

 

当たり前のことは、当たり前だからこそ、誰も言いません。

そして、いつのまにか、当たり前であることが忘れ去られてしまいます。

 

すると、世代を超えた時に、それが当たり前である感覚を持っていない世代が現れます。

彼らの世代では、その感覚がすっぽりと抜け落ちているのです。

 

・「疲れたら、休む」

・「自分を、許してあげる」

そんな当たり前のことでさえ、当たり前ではなくなりつつあります。

 

誰も言わないからこそ、「当たり前のことを、あえてキッパリと言うこと」に、大きな意味があるのです。

狭くなっていた視野を、大きく広げてくれる

僕は、悩んだり落ち込んだ時は、本を読みます。

 

なぜ本を読むのか?

行き詰まっているときは、視野がものすごく狭くなります。

自分がいる世界が、わずか1メートル四方の箱の中のような錯覚をします。

 

そんな時に、本を読むことで、自分がいかに狭い世界にいたかに気づけます。 

 

この本の中で、

「サクセスなんて、品が悪い 」

「へらへらと質の高い仕事をする」

という言葉が、ものすごくグサッと刺さりました。 

 

仕事で「上を上を」目指しており、ちょうど行き詰まっていた時でした。

狭い世界で、いかに頭一つ出るかしか考えていませんでした。

 

最初はちゃんと見えていましたが、

いつのまにか、その狭い世界での競争に勝つことが目的になっていました。

そんな時に、先ほどの2つの言葉に行き着いたことで、救われました。

 

この本には、そういった言葉が、たくさんたくさん詰まっています。

 

最後に一言!

誰も、ずっと調子が良い訳ではありません。

絶好調の時もあれば、全てがうまくいかない時もあります。

 

うまくいっている時は、大丈夫。

問題は、調子が悪い時。

この時に、いかに立て直す手段を持っているか。

 

この本は、そんな手段の1つとして、

自分を立て直すきっかけをくれます。

 

「なんだか調子が悪いなー」と思った時は、

立ち止まって、ゆっくりこの本を手に取ってみてください。

そこから抜け出すヒントが、たくさん見つかるはずです。

 

併せて読みたい!

『「やりがいのある仕事」という幻想』森博嗣

 「やりがいのある仕事」って、なんだろう。

1日1時間しか働かない著者による、新しい切り口の仕事論。 

『つぶやきのクリーム』森博嗣

作家・森博嗣による純玉のつぶやきたち。

ハッとさせられる言葉のオンパレードです。