だまん氏のブログ

元不動産屋→現・外資コンサル。人生の先生は本と映画。面白かった本や映画、仕事について、など日々思ったことを好き勝手に書いていきます。

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【書評・解説】『コーポレート・ファイナンス 実務の教科書』実践で使いこなすための1冊

企業経営において、今や欠かせない「ファイナンス」の知識。

 

先日、その入門書となる1冊をご紹介しました。 

 

こちらの1冊で、「ファイナンスの基本のキ」が分かりました。

 

次のステップとして、もう少し実務につながる、突っ込んだ内容を学べる1冊を探していたところ、

同僚にオススメしてもらったのがこちら⬇︎

 

 

 『ざっくり分かるファイナンス』が、最高に分かりやすい入門書だとすると、

本書『コーポレート・ファイナンス 実務の教科書』は、実践編という立ち位置。

 

【事業計画の立て方】

【資金調達の考え方】

【企業価値の評価方法】

【投資判断のやり方】

といったことを、実務の現場で使うことを想定して書かれています。

 

 本書の”まえがき”にもありますが、今の時代、

「ファイナンスがわからなければ仕事ができない」

と言っても過言ではありません。

 

ファイナンスを学ぶことは、すなわち「経営力」を身につけること。

経営力は、経営に関わる人のみならず、全ての社会人にとって必要な力です。

 

そんな、”実務で使える経営力”を学ぶための必読書、

『コーポレート・ファイナンス 実務の教科書』をご紹介します! 

 

『コーポレート・ファイナンス 実務の教科書』はどんな本か?

本書の”はじめに”より引用しますが、世にファイナンスの本は数多くあれど、 

「事業会社の経営という視点からファイナンスを捉えた本が少ない」

という実態があります。

 

僕自身、同じ経験をしました。

「ファイナンスを勉強しよう!」と思い立って本屋に行ったものの、

上記で挙げた『ざっくり分からファイナンス』の次に、

・初心者にとって分かりやすい

・詳しい理論よりも、1日でも早く実務に活かせる知識を学べる

というニーズを満たす本は、自力では見つけられませんでした。

 

詳細な理論を解説したり、計算式ばかりの”勉強チック”な本が多かったのです。

 

そのため、僕と同じように、

「どうやって勉強すればいいのか分からない」

「机上の空論だけになり、実践で使えない」

と思っている人も多いはず。

 

本書は、そういった人に向けて書いてあります。

何よりも実践を意識し、特に実務の現場に立っている人に向けた1冊になっています。

 

本書は、以下のような構成になっています。

第1章「企業に求められるファイナスの基本」

 本書の導入部分にあたります。

・そもそも、なぜファイナンスなのか?

・会計との違い

・3つの鉄則(ハイリスクならハイリターンである/今日の百万円と明日の百万円は違う/キャッシュは王様である)

を学びます。 

第2章「実務に必要な要素は3つだけである」

ここでは、実務でファイナンスを使うにあたり、必要な3つのポイントについて解説があります。

いきなり分厚いテキストを読む必要はありません。

この3つのポイントだけでいいのです。

 

1、負債と資本の問題

企業が事業を行うにあたっては、当然"先立つもの=お金”が必要になります。

お金を集める方法は、負債として集めるか、資本として集めるか、の2パターンがあります。

その負債と資本の、最適な割合を考えていきます。

 

2、資本コストの問題

資本コストとは、株主から集めたお金に対するコストのこと。

当然、株主からのお金は返す必要はありませんが、"タダより高いものはない”のも事実です。

当然、そこにかかってくるコストについて考えていきます。

 

3、企業価値評価の問題

事業を行なっていくにあたり、企業の価値を知ることは重要です。

その算出方法を知ることで、適正な株価を計算したり、M&Aの際に相手企業の買収価格を決めたりします。

第3章「事業計画づくりに必要なファイナンスの知識」

企業経営を行なって行く上で、欠かせないのが事業計画。

企業が、将来にわたってどの程度の価値算出をしていくのか。

このままでいいのか、軌道修正したほうがいいのか。

 

今の財務諸表から、将来予測のために財務モデルを組む方法を学んでいきます。 

第4章「実際にどのような資金調達がなされているのか」

企業活動を行なっていく上で、当然のことながら”先立つ物”が必要です。

調達する資金は、負債と資本があります。

企業が、どのような考え方のもとで資金調達していくのかを学びます。

第5章「投資をするのに必要なファイナスの知識を身につけよう」

 事業投資は、企業の生命線です。

この意思決定を間違えれば会社を潰しかねません

というくらい、投資の判断は重要です。

 

企業が投資を行う際に、何を基準に、どう判断していくのかを学びます。

また、投資判断としてのM&Aについても触れます。 

第6章「グループ経営にこそファイナンスの知識が必要である」

各事業部門が独立して事業を行っていくのでは、グループ経営は成り立ちません。

どうしても、各事業部は自分たちの売上・利益を追求しがちなのです。

それら全体を把握し、最適な配置や投資を行なっていくのが、本社=コーポレート部門の役割です。

その考え方を学んでいきます。

 

本書のオススメポイント!

実務経験者による、実務に活かすための1冊

これまで何度も述べていますが、

僕ら忙しい社会人にとっては、勉強することが目的ではなく、実務に活かすことが目的。

本書は、徹底的にその目線で書かれています。

 

著者自身が、実務の現場で戦っていた人であることも重要です。

自身のリアルな経験をもとに、必要な情報だけが厳選して書かれています。

「これだけ知っておけば大丈夫!」と、ポイントを絞ってあるのがありがたい。

痒いところに手が届く解説!

上記にも関連しますが、"難しいお勉強の本”でないことが大きなポイントです。

”話し言葉”で解説がされているため、

一見無駄に見える脱線や、本音の言葉が漏れてきます。

 

僕ら初心者にとって、実は意外とこういった本音の部分が大事だったりします。

 

たとえば、本書の中に出てくる「株主資本コスト」の話。

 

計算式を使って、数値を導き出す方法は知っていたのですが、

「確かに数値は算出できるけど、株式が企業に期待するコストって、絶対的な数値って本当に導き出せるのだろうか?」と、疑問に思っていました。

 

この本の中ではその点について、

こうした不確かなコストをどうやってとらえればいいのでしょうか。

誰も決定的な手法を思いついた人はいません

と、ぶっちゃけてくれます。

「あ、やっぱりそうなんだ!」と思えることに加え、

"この考え方は、不確かな状況で、少しでも近い数値を導き出そうという試みなのだ”と理解ができます。

 

初心者特有のささいな疑問に答えてくれる、痒いところに手が届く解説が秀逸な1冊です。

 

最後に一言!  

本書の最後に、これから求められる人材について、

経営者として、幹部人材候補として、「経営力」をしっかりと身につけた人材

 と書いてあります。

 

事業計画を立てて将来予測をし、リスク管理をし、投資判断をし、グループ経営を行なっていく。

「経営力」を身につけるには、ファイナンスの知識は不可欠です。

 

経済が右肩上がりに発展し、売上・利益至上主義でやっていけた時代はとっくに過ぎ去っています。

何でもかんでも拡大していけばいいわけではありません。

そのため、近年ファイナンスの重要性がますます高まっています。

 

ファイナンスは、経理財務や企業のトップだけが学べばいいのではなく、

全てのビジネスマンにとって、必要な知識です。

そして、学んだ知識は、実践で活かしてこそ本当に力になります。

 

そのための手引きとして、ぜひ『コーポレート・ファイナンス 実務の教科書』を手にとってみてください!

 

併せて読みたい!

コーポレート・ファイナンスに関する本

実務以前に、

・そもそも、ファイナンスって何だ?

・なんでファイナンスって必要なんだ?

ということを、丁寧に学びたい人には、入門編としてこちらをオススメします。

 

www.daaman-blog.com

 

会計に関する本

2冊ほど、会計学を学ぶには最適の本をご紹介します。

 

こちらは、「会計学の考え方」を知れる1冊。 

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こちらは、素人でも財務諸表を読めるようになるための1冊です。

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