「ファイナンスって一体何のこと?」
「どこから勉強していけばいいの?」
そんな人に、ファイナンスのイロハを学ぶために最適の1冊をご紹介します。
ファイナンスとは、ざっくりいうと
「企業価値の最大化を実現するために使うツール」
です。
ファイナンスは、多くの人にとって馴染みのある”会計”と表裏一体の関係にあります。
会計が、会社の過去実績を分析する手法に対して、
ファイナンスは、会社の将来価値を算出します。
著者である石野雄一さんは、東京三菱銀行を経てMBAを取得後、
日産自動車でゴーンCEOとともに、ファイナンスの仕事に携わっていた人物です。
彼自身、100冊以上のファイナンスの本を読みながら、
苦労してファイナンスを身につけたそうです。
本書は、彼のそういった経験をベースに、
”無駄な遠回りをしない”ためのファイナンス入門書です。
それでは、『ざっくり分かるファイナンス』をご紹介します!
『ざっくり分かるファイナンス』はどんな本か?
そもそもファイナンスって何?
本書の紹介の前に、簡単に「ファイナンスとは何か?」について解説します。
繰り返しになりますが、ファイナンスは、
「企業価値の最大化を実現するために使うツール」
です。
企業価値とは、誰にとっての価値なのか?
それは、
「企業にお金を提供してくれている人=金融機関・株主」
です。
では、どのように企業価値を最大化するのか?
それは、以下の3つの観点を通して行います。
1:「どこに投資をするのか?」
(投資をしないと企業は成長しません)
2:「どうやって資金調達をするのか?」
(銀行から借りるのか、株主から調達するのか?)
3:「生み出したお金を、どのように配分するのか?」
(金融機関に返すのか、株主に返すのか、あるいは再投資するのか)
企業が存続するには、
「お金を調達する→調達したお金を投資する→投資によって得たお金を分配する」
というサイクルを回し続ける必要があります。
その全ての局面で、最適な判断を下すためのツールがファイナンスなのです。
本書の簡単な概要
この本は、6章構成になっています。
第1章:会計とファイナンスはどう違う?
第2章:ファイナンス、基本のキ
第3章:明日の1万円より今日の1万円〜お金の時間価値
第4章:会社の値段
第5章:投資の判断基準
第6章:お金の借り方・返し方
最初の2章が、全体230ページ中の120ページを占めます。
ここで、
・そもそも会計とファイナンスの違いとは?
・ファイナンスはなぜ重要なのか?
についての解説があります。
簡単にいうと、
・会計は、「利益/過去」を見る
・ファイナンスは、「キャッシュ/未来」を見る
というのが大きな違いとなります。
財務諸表を通して、これまでの会社業績を見るのが会計。
対して、将来的に企業が生み出すキャッシュを見るのがファイナンスです。
3章以降は、少し具体的な話に入っていきます。
・お金の現在価値の考え方
・企業の値段の決め方
・投資実行の判断は、どのように行うか?
・企業価値を最大化させるための、お金の借り方は?
といったことを学びます。
この本のポイント!
ファイナンスの核心が掴める1冊!
この本は、著者の苦労が元になって生まれています。
どれくらい苦労したのか?
彼はファイナンスを身につけるため、関連書籍を延べ100冊以上(金額にして100万程度)読んできたそうです。
自身が苦労した背景があるからこそ、読者が同じ過ちを繰り返さないよう、
初心者でも核心が掴めるよう、多くの工夫が凝らしてあります。
著者の言葉を引用します。
この本は、ファイナンスのことを勉強しようにもどこから手をつけていいのかわからないビジネスパーソンや経営者の方々が、ファイナンスの基本部分をざっくりと理解できるような内容にしました。
ファイナンスの習得に悪戦苦闘した私が書いたものゆえ、つまずきやすいところが手にとるように分かる内容になっているはずです。
読みながら、その配慮を感じたのは以下のポイントです。
・難しい話は、全て簡単な”たとえ”を用いて、噛み砕いて解説してくれる
・図解が非常に多い!
・各項目毎に「おさらい」コーナーを作り、話を整理してくれる
全体で230ページ程度の本書。
新しい分野を学ぶ時に、これくらいの分量の本を読むには数日かかることはザラです。
しかし、本書は途中で立ち止まることなく、2日程度でサーっと読めてしまいました。
会計だけではダメ。ファイナンスの重要性が分かる!
僕自身は、
「ファイナンスってなんだ?」
「会計だけじゃダメなの?」
というスタンスでした。
しかし、今や世界的にファイナンスの重要性が高まってきています。
その理由はいくつかありますが、大きなところだと、
・”利益”はごまかせる上に、会計基準によって変わってくる
・企業価値を判断する指標は、”利益”ではなく”キャッシュ”である
・会社の将来性を見通すには、未来を見るファイナンスの知見が必要である
企業は、
「資金の調達→投資→分配」
無くして成り立ちません。
その全ての判断に使われるファイナンスというツールは、
企業経営の根幹に関わる知見なのです。
本書を読みながら、ファイナンスの重要性がヒシヒシと伝わってきます。
それは、著者がただ机上の空論を述べているだけでなく、
実務の現場で、ファイナンスを扱ってきたからかもしれません。
最後に一言!
最後に、本書の「はじめに」にある著者の言葉を引用します。
あなたは、私のように、ファイナンスの習得に必要以上の時間とお金をかける必要はありません。
ファイナンスはあくまでツールです。
大切なことは、このツールを使って何をするか、社会に対してどう価値提供をしていくかです。
この本は、ファイナンスを学ぶ最初のきっかけに最適の1冊です。
しかし、目的は勉強ではありません。
それを実務に活かし、新しい価値を生み出すのが目的です。
無駄な回り道をせず、最短距離でファイナンスの核心を掴む。
そのコンセプトから生まれたのが、本書なのです。
これからファイナンスを学ぼうと思っている人は、ぜひ本書を手にとってみてください!
併せて読みたい!
「ファイナンス」と表裏一体である「会計学」
会計を0から学ぶ人には、以下の2冊がオススメです。
『さおさけ屋はなぜ潰れないのか?』
本書は、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」という身近な疑問から、
「そもそも会計学とは何のためにあるのか?」という基本中の基本を知れる1冊です。
『財務3表一体理解法』
財務諸表(PL/BS/CF)の読み方を学びたい人には、本書がオススメ。
会計の初心者に向けて、財務諸表の読み方を丁寧に解説してくれます。
また、本書の続編としては、以下の書籍がオススメです。
『道具としてのファイナンス』
本書の話を、Excelを使って具体的に解説している1冊。
より実践を学びたい人へ。