会計学について学びたいと思った時、最初の1歩に最適の1冊があります。
山田真哉さんが書いたこちらの本です。
ふと疑問に感じたことを紐解きながら、会計学の本質を学べるようになっています。
題名にもなっている、「たーけやー さおだけー」の「さおだけ屋」
しかし、町を走っている「さおだけ屋」から、さおだけを買ったことのある人ってどれくらいいるのでしょうか?
「さおだけ屋」を考えた時に、2つの疑問が浮かびます。
●そもそも、さおだけの需要は多くない(1回買えば、何年ももつので)
●そもそも、さおだけ屋から買うメリットがない(金物屋に走っていけばいいので)
それなのに、なぜ「さおだけ屋」は生き残っているのでしょうか。
この答えの中に、会計学の本質が隠れているのです。
(答えは、のちほど解説します)
この本は、
●これから会計学を学ぼうと思っている人
●「そもそも会計学ってなんだろう?」という興味本位の人
にとって、最適の1冊です。
会計学について知れるだけでなく、世の中を見るときの数字のセンスも身につきます。
それでは、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?身近か疑問から始める会計学』をご紹介していきます。
『さおだけや屋はなぜ潰れないのか?』はどんな本か?
身近な疑問から、 会計学の本質を学ぶというアプローチの本書。
この本の中に登場する7つの疑問を紐解く過程で、会計学的な物事の考え方を知れます。
会計学というと、どうしても難しそうなイメージがあると思います。
数字に強い人しか活躍できないように思えてしまいます。
しかし、著者は言います。
会計士に必要な数学的スキルは加減剰余のみだと言い切ってしまってもよい。
・・ (中略)・・
普通の人たちのとって必要なのは、「数字に弱くても、センスはある」ということではないだろうか。
ー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?身近な疑問から会計学を学ぶ』より
会計学の本質を学ぶには、「数字のセンス」さえあればいい。
この「数字のセンスを磨く方法」が、この本の中に書いてあります。
何も難しいことはありません。
誰もが一度は「あれ?」と思うようなことを、一つ一つじっくり検証していくだけです。
この本を読み終えた頃には、「数字のセンス」が身につき、世の中を見る目が変わっていることでしょう。
僕らの身近にある7つの疑問
それでは、本書で紹介されている7つの事例についてご紹介していきます。
潰れないさおだけ屋から、利益の出し方を学ぶ
先ほども出てきた「さおだけ屋」に対する大きな疑問は、2つあります。
●そもそも、さおだけに対するニーズが少ない
●わざわざ、さおだけ屋から買う必要がない
それにもかかわらず、彼らが生き残っているのはなぜでしょうか?
答えは、彼らの本業が「金物屋」だからです。
金物の配達のついでに、あのアナウンスをしているだけだったのです。
この事例から、「利益の出し方」を学びます。
商売を成り立たせるには、利益を出すしかありません。
そして、利益を出す方法は2パターンしかありません。
①売上を上げる
②費用を減らす
さおだけ屋は、あくまで配達のついで。
そのため、「②費用を減らす」において、ほとんど費用がかかっていなかったのです。
たまに売れれば、それがまるまる利益になる。
このさおだけ屋のように、費用を減らすことで、ビジネスは存続できるのです。
郊外ベッドタウンにある高級フランス料理屋から、連結経営を学ぶ
著者の住むのは都心から離れた郊外ベッドタウン。
駅から10分ほど歩いたところに、高級フランスレストランがあるそうです。
1回の食事で数万するそのお店。
都心ならいざ知らず、郊外の街でもなぜこんな高級レストランが存続できるのでしょうか?
その答えは、「スキマ時間でシェフ主催の料理教室・ワイン教室をやっていること」でした。
つまり、「フランス料理屋という本業」と、「料理教室という副業」を組み合わせることで、商売として成り立っていたのでした。
料理教室をランチタイムとディナータイムの間にやることで、本業に支障はありません。
ターゲットは周辺に住む主婦層と思われるので、郊外の駅徒歩10分でも問題ありません。
料理教室の方から、レストランの方へ集客することも考えられます。逆もしかり。
ある程度副業がしっかり回っていれば、本業での利益がそこそこでも存続ができます。
このように、本業と副業をうまく組み合わせる(=連結経営)ことで、本業だけでは厳しくとも、事業は存続していけるようになるのです。
在庫だらけの自然食品屋から、在庫と資金繰りを学ぶ
本来、在庫は少ない方がいいです。
●賞味期限切れ
●流行遅れ
●破損の恐れ
●人件費・場所代
●機会損失
などのリスク・コストがあるからです。
しかし、なぜか在庫だらけの自然食品屋が著者の身近にあったそうです。
その答えは、「メインの販売ルートがインターネット経由」だからです。
お店のメインの役割は、倉庫としての機能だったのです。
本来、在庫は資金ショートの危険性があります。
仕入れた商品への支払いをする時に、在庫のままだとお金が回収できておらず、払えないと倒産となります。
そのため、基本的には在庫は嫌われます。
在庫処分をするために、お店はバーゲンセール、在庫一層セールなどを行うのです。
完売したのに怒られたことから、機会損失を学ぶ
あるスーパーで、お弁当の販売担当をしていた店員の話です。
彼は、お昼すぎに100個全部の弁当を売り切ったのですが、なぜか上司に怒られました。
その理由はなぜか?
それは、「機会損失」をしていたからです。
お昼過ぎに100個売れたということは、もしかしたら1日で200個売れたかもしれません。
「100個売り切ってすごい」ではありません。
「もう100個売る機会を失った」ということになるのです。
会計の世界では「在庫を余らせること」と同じくらい、「在庫を品切れにすること」は悪いことだと考えられています。
あえてトップを目指さない雀士から、回転率を学ぶ
ある雀荘での話です。
対局の最終局面。高い点数で上がれば、逆転で1位になれる位置にいる雀士が、なぜソコソコの手で上がり、2位で対局を終えました。
彼は、なぜ1位を狙わなかったのか?
答えは、彼が麻雀屋の店員で、勝つことよりも、早く対局を終わらせることが目的だったからです。
つまり、「ゲームの回転率を上げたかった」のです。
フリー雀荘は、1ゲームいくらという料金体系。
つまり、同じ時間でたくさんゲームをしてもらった方がお店側は儲かります。
利益を上げるには、まず単価を上げる方法があります。
しかし、それが難しい場合、「回転率を上げる」という方法があります。
1000円カットなどは、普通の美容院だと1時間でせいぜい5人しか対応できないところ、回転率を上げて20〜30人対応することで、薄利多売で設けているのです。
割り勘の時に支払い役をやる人から、キャッシュフローを学ぶ
飲み会のときに、いつも「俺が払っておくよ!」という人っていませんか?
彼は、なぜまとめて払うことにこだわるのでしょうか。
答えは、彼の「キャッシュフロー(=お金の流れ)が良くなるから」です。
ポイントは、お金を現金で集めて、会計はカードで払うこと。
カードの請求は、翌月末、あるいは翌々月10日とかになることが多いです。
そうすると、 その支払い期日まで、彼の手元には集めたお金だけ多くある状態になります。
すると、たとえば一時的に現金が必要になった時。
現金がない場合は、利子付きで借りないといけません。
しかし、彼の場合は、無利子で次のカードの支払い期日まで、お金を借りていることを意味するのです。
ただし、キャッシュフローが良くなったからといって、決して利益が出るわけではありません。
利益の見方と、キャッシュフローの見方は異なります。
大事なことは、いろんな見方があるということを知っておくことです。
「50人に1人が無料!」の謳い文句から、数字のセンスを学ぶ
「50人に1人が無料!」を打ち出しているお店があったとします。
これを聞いて、あなたはどう思いますか?
一見お得に見えるこの謳い文句ですが、ここで「無料」と言う言葉に惑わされず、本質を見抜けるのが数字のセンスです。
50人に1人が無料ということは、100人に2人が無料。
お店側からすると、「一律たったの2%割引」ということになります。
「一律2%割引!」だとインパクトはありませんが、
「50人に1人が無料!」だと、パッと聞いた時のインパクトが違います。
それを狙った戦略だったのです。
数字のセンスの良い人は、その時どういう判断をするのか?
一律2%割引と同じことなら、一律5%割引しているとこで買おう、などと考えるのです。
大事なのは、日常で数字に対するセンスを磨くこと!
結局のところ、どのようにすれば数字のセンスが身につくのでしょうか。
難しいことはありません。
まずは日々の生活のなかの「ちょっとした数字」にも気を配ることが最初の一歩となる。
数字は単なる記号ではない。
ありとあらゆる数字の背後には、ちゃんと「意味」が存在するのだ。
ー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?身近な疑問から会計学を学ぶ』より
この本の中にあるように、日常で浮かんだ些細な疑問をそのままにせず、その裏側について考えてみる。謎解きをしてみる。
それが、数字のセンスを磨くことになります。
会計が生まれる前の世界では、商売人たちは日々の取引をただ記録するだけでした。
それが、会計の誕生によって、目に見えない利益が可視化できたり、未来予測ができるようになりました。
「どうすれば物事を的確にとらえることができるようになるのか?」ということにチャレンジし続けているのが「会計」という学問なのです。
ー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?身近な疑問から会計学を学ぶ』より
会計学とは、物事の本質を捉える学問。
その考え方の一端を、本書を通して学べます。
かの文豪ゲーテは、会計学を「最高の芸術」と言ったそうです。
奥の深い会計学を知る最初の1歩目に、ぜひ本書を手に取るところから始めてみてください。
併せて読みたい!
会計学をもう少し踏み込んで学びたい人には、次はこちらの本をオススメします。
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上記の書籍の続編。
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