『財務3表図解分析法』を読みました!
本書は、あのベストセラー『財務3表一体理解法』の続編にあたる1冊。
ちなみに、前作についての書評はこちら⬇︎
1作目は、会計に触れたことのない初心者でも、財務3表が読めるようになるために書かれた本でした。
あまりの分かりやすさに、感動すら覚えました。
しかし、前作の位置付けはあくまで”基礎中の基礎”
基礎知識だけで、試合は戦えません。
実際に企業の財務状況を読み解くとなると、また別の話。
その橋渡し役となるのが、本書『財務3表図解法』です。
会計の初心者にとって、財務3表は数字の羅列。
そこから法則性を見つけたり、状況を読み解くのは至難の技。
しかし、
”財務書評を図解する”という方法によって、
初心者でも簡単にできるようになるのです!
本書を読むことで、会計の素人でも、
・会社の経営状態は良いのか?悪いのか?
・会社の将来性はどうなのか?
・経営者は、何を考えているのか?
が分かるようになります。
それでは、『財務3表図解法』をご紹介します!
『財務3表図解分析法』はどんな本か?
『財務3表〜』シリーズの2作目。
1作目『財務3表一体理解法』は、基本のキを丁寧に学べる1冊でした。
2作目の本書では、
「1作目で身につけた知識をどう使っていくか?」を学ぶ、いわば”実践編”
財務諸表を分析することで、
・会社の経営状態の健全性
・事業がどれくらいうまくいっているのか、あるいはうまくいっていないのか?
・会社の将来性
・経営者が何を考えているか?
が見えてきます。
ただし、会計の素人である僕たちが、
財務諸表の数字をただ眺めても、それはなかなか難しい。
では、どうすればいいのか?
本書では
「財務諸表を図にして、パッと見で分かるようにした上で、分析をする」
という手法を取ります。
図解をして、数字をアナログに見る事で、
素人でも財務諸表が読み解けるようになるのです!
具体的に、BS/PLをこのように図解します。
デジタルな数字の羅列を図解する事で、
見えなかったものが見えてくるのです。
図解することで、会計の素人でも会社の状態がわかるようになるのです!
財務諸表を見るときに、抑えるべき重要ポイント!
図解をして、会社の状態を読み解いていく際に、
押さえておくべきポイントがいくつかあります。
この本で紹介されているポイントを、簡単に押さえておきます。
ざっくりと会社の状態がわかる4つの指標
最初に、素人でも「これだけ見ればざっくりと会社の状態がわかる指標」をご紹介します。
ROE (Return On Equity)
日本語にすると、「自己資本に対する当期純利益」
簡単に言うと、
「株主が出資した資本金に対して、会社がどれくらいの利益をあげたのか?」
いわば、株式投資に対する利率を表しています。
財務レバレッジ
これは、「総資本/自己資本」という計算式で求められます。
「自己資本に対して、どれくらいの資本を集めることができたのか?」を表しています。
総資本回転率
「売上高/総資本」となるこちらの指標は、
「投下した資本に対して、どれくらいの売上をあげているのか?」がわかります。
当期純利益率
純粋に、「当期純利益/売上」として、「売上に対してどの程度の利益を上げているか?」がわかります。
デュポン・モデル
以上をまとめると、
ROE=財務レバレッジ✖︎総資本回転率✖︎当期純利益率
=(総資本/自己資本)✖︎(売上高/総資本)✖︎(当期純利益/売上高)
と表すことができます。
1920年代に、アメリカのデュポンという会社が、この手法による業績管理を導入したそうです。
そこから、この読み解き方を「デュポン・モデル」と言うそうです。
会社の本当の状態を知るキャッシュフロー分析
次は、キャッシュフローを見ていきます。
昨今、キャッシュフローの重要性が高まっています。
その背景として
・BS/PLからは、具体的な現金の動きが見えてこない
・BS/PLは数字をごまかすことができるが、キャッシュフローはできない
などの理由があります。
キャッシュフロー計算書には、3つの項目があります。
各項目を簡単に説明すると、
営業キャッシュフロー:営業活動によるお金の増減
単純に、営業活動によるお金の出入りを表します。
これがプラスであれば、本業で儲かっているということです。
逆に、ここがマイナスということは、本業で損をしているということ。
借入や増資で資金調達を行うため、財務キャッシュフローがマイナスになっていることが多いです。
投資キャッシュフロー:設備投資等によるお金の増減
投資活動によるお金の増減を表します。
新たに設備投資を行うと、当然マイナスになります。
逆に、不動産などの保有資産を売却すると、プラスになります。
調子の良い会社は、将来のために新たな設備投資を行いますので、マイナスになっている場合が多いです。
逆に、ここがプラスだということは、
本業以外の資産を売却している=本業が苦しい、という可能性も考えられます。
財務キャッシュフロー:借入、配当などによるお金の増減
財務活動によるお金の増減を表します。
ここがマイナスということは、借金の返済、配当、もしくは自己株式取得による自己資本比率の上昇を行なっている場合です。
調子の良い会社は、本業で儲かったお金で借金を返済したり、配当したり、自己株式取得したりするので、マイナスのケースも多いです。
逆にプラスの場合は、借入や、新株発行によって、お金を集めているのです。
新たに投資をするという前向きな理由か、もしくは本業が苦しく、資金繰りが苦しいという後向きな理由か、どちらの可能性もあります。
これら3つの項目を組み合わせて見ることで、会社の状態を把握したり、将来予測ができます。
財務諸表:図解分析の具体的方法
次に、図解分析の具体的方法について、簡単に共有します。
まず、PLとBSをこのように図解します。
その中で、図解することで読み解けることがいくつかあります。
「流動比率=流動資産/流動負債」はどうなっているか?
流動資産と流動負債は、ともに1年以内に現金化、もしくは返済する予定の資産と負債です。
1年以内に返済する負債よりも、資産が少なければ、資金繰りが心配になります。
逆であれば、金払いは安心です。
有利子負債がどの程度あるか?
上記の2016年時点の三菱自動車は、ほぼほぼ無借金経営であることがわかります。
売上に対して、あるいは利益に対して、有利子負債がどの程度あるかは、大事なポイントです。
利益剰余金はきちんと積み上がっているか?
BSの右側にある利益剰余金。
これまでの利益が積み上がっているので、ここにきちんと蓄積されているかどうかで、会社のこれまでの経営状態が分かります。
これを当該企業1社だけでやるのでなく、
・同業他社との比較
・同社の過去実績との比較
も同様に、図解して行うことで、会社の状態が読み解けるようになるのです。
『財務3表図解分析法』に一言!
本書は、素人が会計を学ぶための画期的な1冊です。
前作『財務3表一体理解法』で
・財務諸表とはそもそも何か?
・どうやって読むのか?
という、本当にベーシックな部分を学ぶことができました。
ただし、
「財務諸表の見方はわかったけど、これをどう実践していけばいいのだろうか?」
という疑問は残っていました。
それを、本書が見事に解決してくれました。
自分が在籍していた会社や、気になった会社の財務諸表を見たときに、
「図解してポイントを抑えれば、会社の状態や将来性がなんとなく見えてくる」
というコツを、身につけることができました。
本書の後半では、多くの事例を扱ってくれます。
NTT/ソフトバンクの比較、アップル/ソニーの比較、ユニクロ/ニトリの比較などなど・・・
これらの事例分析を通して、
「財務諸表が読めるだけで、こんなに多くのことが分かるんだ!!」
という、驚きの連続でした。
「財務諸表はなんとなく分かったけど、実際にどう活用するのかわからない。。。」
そんな人は、ぜひ本書を通して、財務諸表の”本当の見方”を知ってください!
併せて読みたい!
本書を読む前段階として、会計の基礎知識が不安な人は、先にこちらを読んで理解を深めることをオススメします!
会計をもっと身近に感じたい人へ。
身の回りの些細な疑問を突破口として、「会計学とは何か?」を知れる1冊。
会計の基礎知識を学びながら、会社の重要要素が詰まった”四季報”を読めるようになる手引書です。
モルガン・スタンレーのEcxelフォーマットを作った著者により、1ランク上のExcel本。財務モデルの作り方・回し方という超実践的内容も書かれています。