フランスの名作『太陽がいっぱい(Plein Soleil)』を知ってますか?
1960年に作られた、アラン・ドロン主演のフランス映画。
タイトルからは全く想像がつきませんが、犯罪サスペンス物語です。
アラン・ドロン演じるトム・リプレーは、金持ち息子・フィリップを殺し、彼になりすまして彼の財産を奪おうとします。
イタリアの街並みや、海の映像も美しく、観ている人を飽きさせない作品です。
この記事では、
●1分でわかる名作『太陽がいっぱい』のあらすじ
●この映画の3つの魅力
について書きました。
なお、核心には触れませんが、多少のネタバレは含みますので、まだ観ていない方はご注意ください!
1分でわかる『太陽がいっぱい』のあらすじ
トム(アラン・ドロン)は、イタリアにいる放蕩息子・フィリップ(モーリス・ロネ)をアメリカに連れて帰ってくるよう、フィリップの親父に依頼されます。
大金と引き換えに依頼を受けたトムですが、フィリップは一向に帰る気配を見せません。
そのため、待ちきれないフィリップの父親から、契約の解除を言い渡されてしまいます。
そんな中、友人のパーティに参加するため、トムとフィリップはフィリップの婚約者・マルジュ(マリー・ラフォレ)と3人で船に乗って出かけます。
フィリップは、貧しいトムのことをバカにします。
また、2人きりでなく、トムも一緒なことに不満を言うマルジュに対して、フィリップは「トムを船から下ろす」と言います。
バカにされた上、その言葉を盗み聞いてしまったトムは、フィリップに対して不信感を募らせます。
絶好のタイミングを見計らって、フィリップを殺して海に落としたトムは、フィリップになりすまします。
パスポートを偽造し、彼のサインも練習します。
万事うまくいっているように思えましたが、小さなきっかけでフィリップの友人に疑われてしまいます。
危険を感じたトムは、彼も殺害。
フィリップが殺したように見せかけ、さらにはフィリップの全財産を婚約者・マルジュに託すよう遺言をでっちあげ、フィリップ自身は自殺したように見せかけます。
最後に、ずっと想いを寄せていたマルジュを自分に振り向かせ、フィリップの財産も結果的に自分のものとなり、全てがうまくいったかに見えたトム。
しかし、最後の最後に、衝撃の結末が待っていたのでした・・・
危機迫るストーリー展開の面白さ
難しい話はさておき、この映画はエンターテイメント作品として一級品です。
物語の冒頭から、放蕩息子フィリップは、どこかトムをバカにしたような態度を取っています。
トムの間違ったフォークの使い方を指摘し、
「上品に見せようとしてるところが下品だよな」と言ってみたり。
船でマルジュとイチャイチャするために、水が苦手なトムを小さな小舟に乗せて追い出したり。
フィリップを殺害する動機が、各所にちりばめられています。
また、殺害に至ったあとの展開も迫力満点です。
船の上で、フィリップの胸にナイフを刺したトム。
フィリップを海に落とそうとすると、巻き込まれて自分も海に落ちてしまいます。
また、その後の先行きの不安を示すかのように、突然海も大荒れ。
なりすましのために、巧妙に工作をしながら、フィリップの知人や警察の疑いから逃げ続けるトム。
いつのまにか主人公トムに感情移入してしまい、「うまく逃げれるのか?」と、ついつい応援している自分がいました。
無事に全ての計画を成功させ、フィリップの婚約者も手に入れた時は、心の中でホッとしてしまいました。
しかし、これだけでは終わりません。
最後までハラハラする展開に、観ていて飽きる暇がありませんでした。
アラン・ドロンの名演
名優アラン・ドロンの出世作にして代表作である本作。
アラン・ドロンの光る演技も、この映画の大きな魅力です。
彼は、貧しい男として描かれています。
お金持ちフィリップや彼の友人にも、貧しい家出身だとバカにされるシーンがあります。
その通りに、少しアホな貧しい男のように見えますが、実は頭の切れる男です。
普段は少しアホっぽいですが、何かを仕掛ける時にはサッと表情が変わります。
フィリップを殺害する場面。
彼になりすまそうと、用意周到に準備を進める場面。
フィリップの友人を殺し、犯人をフィリップに仕立てようとする場面。
マルジュにアプローチし、自分に目を向けようとする場面。
一番ドキッとしたのは、映画の最後で婚約者マルジュを振り向かせた時。
フィリップの自殺を受け入れられないマルジュに対して、「フィリップはマルジュのことを大事にしていなかった」と伝え、自分に振り向かせようとします。
しかし、「帰って!」と言われて、一度は出口に向けて歩き出した彼を、マルジュは再び呼び止めます。
呼び止められた時、ほんの一瞬ですが、トムが「ニヤッ」とします。
自分が去るフリをすることで、マルジュが呼び止めることまで計算していたかのように。
チラッと見えた策略者の顔が、とても印象的で怖かったです。
能天気な男を装いながら、実は抜け目ない犯罪者を演じているアラン・ドロンの演技は、観ていて引き込まれます。
魅力的なイタリアの空気感や街並み
この映画の舞台は、イタリア。
当時のイタリアの街並みや空気感も、この映画の醍醐味です。
実際に観ていただくのが一番ですが、僕が素敵だと思ったポイントをまとめます。
●今の時代でも通用するオシャレな服装
貧乏人トムの服装でさえもオシャレです。
シンプルな服装ですが、サイズ感や着こなしが抜群にかっこいいです。
●オシャレでユニークなインテリアや内装
白を基調にしているマルジュの家、絵画やシャンデリアを飾っているホテルなど、日本では見られない内装やインテリアが施されています。
●イタリアの街の雰囲気
物語の冒頭は、屋外テラスで食事をしているシーンからはじまります。
いわゆる、イタリアやフランスのイメージそのものです。
また、海の上をサクッと小さいボートで移動したり、古い型の車が走っていたりするのが、イタリアっぽくてかっこいいです。
●海と船のシーン
物語の中で大きな意味を持つ海と船。
「船に乗る」という体験が日常にないため、「そうやって操縦するんだ!」とか、「意外と船内ってちゃんとしているんだ!」など、それだけで観ていて面白かったです。
簡潔にまとめてしまいましたが、その世界を疑似体験できるのが映画の魅力。
映画を観終わった後、自然とフランス語を使いたくなる自分がいました。
フランス映画の名作『太陽がいっぱい』は観ておくべき1作!
この作品は、これまでスクリーンで2回ほど観てきました。
1回目は数年前、学生の時に「午前十時の映画祭」で観ました。
今回は、下高井戸シネマという名画座で観てきました。
「華麗なるフランス映画」という特集がやっており、この特集では他にも「昼顔」「ダンケルク」などもやっていました。
1960年の作品であり、ただでさえ難しいイメージのあるフランス映画なので、観ることに少し抵抗がある人もいるかもしれません。
しかし、そんな不安は全く感じさせないくらいに面白い名作です。
今でもこうやってリバイバルされるには、理由があるのです。
映画を語る上で絶対に観ておくべき1作なので、まだ観たことのない人はぜひ観てみてください!
関連記事
他の映画についての記事も、ぜひ参考にしてみてください!
1980年代のギャング映画の名作『アンタッチャブル』
アル・カポネを捉えようとする役人の戦いを描いた作品です。
アカデミー賞脚本賞を受賞した『スリー・ビルボード』
一見怖そうに見える作品ですが、綿密な脚本と、人の変化に心打たれる作品です。
アメリカのロビー活動を描いた作品。
敏腕女性の奮闘がかっこよすぎて、最後は思わず拍手したくなりました。
光州事件の実話を元にした『タクシー運転手』
政府の統制によって、真実が隠されていた光州に乗り込むドイツ人記者と、彼を送り届けるタクシー運転手の戦いの物語。