えらいてんちょうの『静止力』って本が、ホリエモンの『多動力』に真っ向から喧嘩を売っていて面白い。
みんな周りに気を遣ってばかりの今日この頃、真っ向から実名で批判しているのは爽快ですね。
イケダハヤト氏や、M氏として脱社畜サロンの正田圭氏の件にも言及しており、えらてんさんの忖度しない姿勢が素晴らしい。
ただし、誤解のないよう申し上げると、えらてんさんはちゃんとホリエモン氏の本を読み、学ぶべきところも具体的に示した上で、批判をしています。
ーーーーーーーーーーーー
この本で心に残ったのは、この本の終わりにもある、
聖なるものをなくしてはいけない
という言葉です。
ここで「聖なるもの」とは、代々受け継がれてきたもの、を表しています。
それは、これまで長年の歴史の中で育まれてきた価値観だったり、伝統だったり。
そういう、一見「無駄」に見えるかもしれないものを、大事にしていこうという思想です。
多動力という言葉の下、コスパ第一を謳い、無駄だと思ったものは一切削ぎ落とす今風のスタイル。
かくいう僕も、若手の頃は会社の飲み会は無駄と切り捨て、一切参加してませんでした。
だけど、実はそういう生き方をできるのは、まだ身軽で若い時代だけですよね。
なぜなら、赤ちゃんはその対極にある存在だから。
赤ちゃんは、効率なんて考えずに泣きわめきますしね。
だから、ホリエモン的視点に立つと、「家族はコスト」になってしまうのです。
ホリエモンの生き方は、「子供である」とえらてん氏も言い切ってます。
ーーーーーーーーーーーー
先日の台風19号の時に、税金を払っていないからホームレスは救う必要ないということを言っている人がいましたが、まさに多動力の思想はここに行き着くのかもしれません。
税金はコストであり、無駄だという考えがあるのでしょう。
しかし、そもそも税金(社会保障)とは、社会全体で弱者を救っていこうという精神の下に始まっています。
だって、いつ自分がそっち側に落ちるか分かりません。
好んでホームレスになっている人ばっかりじゃありません。
ーーーーーーーーーーーー
先日、飛行機でたまたま隣り合ったスウェーデン人と話していましたが、彼はこんなことを言ってました。
世界一税金が高いと言われるスウェーデン。
彼の国は、「ひどく貧乏にはなれないし、逆にひどくお金持ちにもなれない」
逆にアメリカのような国では、「とんでもなく貧乏になりうるし、とんでもなくお金持ちにもなりうる」
僕は、どちらかというと、みんなで助け合って生きていこうという精神の方が好きですすし、そもそも人間社会ってそうあるべきと思ってます。
ーーーーーーーーーーーー
この本を読みながら、僕自身コンサルをやっている身分として考えることがたくさんありました。
地元の名士になるには、地元に根付き、そこの人々の微妙な息遣いとか、長年の空気みたいなものを肌感で感じる必要があります。
えらてん氏は、
とりあえず半年ROMれ!
と言います。
(ROM:Read Only Memberの略語で、掲示板等で見当違いな発言をした人に対して、「黙って読んでろ!」と言う2ちゃんの造語らしいです)
結局、外からやいのやいの言ったところで、中にいる人にしか分からないことだらけです。
数字上ここの経費を削減して、こっちにリソースを集中させて、そうすれば業績が改善する、というのは、彼らだってきっと頭では分かっているのです。
ただし、そこには微妙な人間関係だったり、これまでの蓄積だったりがあって、そう簡単に実行できなかったりするのです。
逆にいうと、そういうことが分かっているってことは、とても大きなアドバンテージになるんですよね。
ーーーーーーーーーーーー
昨今、「無駄はコスト」という声が大きくなっており、何でも最短ルートで行くことが良しとされる風潮があります。
無駄な回り道をしないために、正解を事前に知りたがる。
結果がわからないものには、チャレンジしない。
無駄だと分かったら、その瞬間にバッサリと切り捨てる。
しかし、目の前のコスパだけじゃ計れないものがたくさんあります。
「こども食堂」だって、無料で食事を配っていたら、その時点だけ切り取ると大赤字。
だけど、それをきっかけに母親が来てくれたり、母親の口コミで他のお客さんが来てくれたり、お店自体の評判が上がったり。
回り回って、自分にかえってきますよね。
ーーーーーーーーーーーー
そういう意味で、最近僕が特に心がけているのが、
「頼まれごとを笑顔を引き受けること」
です。
僕は尖った若手時代を過ごした反省から、「無駄を削ぎ落とすとつまらないことになる」ということを実感しました。
会社の飲み会にほとんど顔出さず、その間に勉強して人一倍成長しようと思っていました。
まぁ学ぶこともたくさんありましたが、あんまり面白くはなかったですね。
飲み会に出て学ぶことだってたくさんありますし、そこで生まれた人間関係から仕事がうまくいく事例をたくさん見てきました。
仕事は結局人と人がやるので、「人間関係」ってめちゃめちゃ大事なんですよね。
そこで、最近は飲み会の幹事を頼まれたら率先してやりますし、たとえば出張先で「今夜のお店選んでおいてー」と頼まれたら、他に若手がいても率先してやる。
そういう、仕事以外の無駄なことを、笑顔で引き受けるようにしています。
結果、何が起こったか。
コンサルの世界は、実にドライです。
案件がきた時に、マネージャーが「この案件にはコイツをアサイン(担当させること)しよう」と決めていきます。
最近僕が気づいたのは、
「マネージャーは、決して仕事の出来る出来ないだけで、アサインを決めていない」
ということ。
それよりも、
「自分が一緒に仕事しやすい人を、色々理由つけて選んでいる」
というケースの方が多いということ。
別に、意図的に飲み会の幹事やったり、お店選びをしていた訳ではありません。
みんなも、なんとなくコイツには頼やすいから(あるいは、頼まれたら断れないだろう)という理由で、僕に頼んできたのだと思います。
ただ、そうすると、まず目立ちます。
目立つことって、とても大事ですが、そう簡単じゃありません。
それが、特別に何かすごいことしなくても、事前にお店とって、みんなに案内して、簡単に段取りして、だけで目立てるのです。
また、みんなに感謝されます。
幹事として、たくさんの人と会話する機会も増えます。
その結果、自然と仕事を振ってもらう機会が増えました。
小さいお願い事とかも、されるようになります。
まだまだ若手の身分からすると、今はとにかくたくさん経験したいという思いでいます。
それであれば、1人のマネージャーの下でずっとやるより、いろんな人に声をかけてもらった方が経験値は上がります。
あとは、選んでもらったその場所で、ある程度のレピュテーション(評判)を稼いでいけば、物事はわりと順調に進んでいきます。
「情けは人の為ならず」という古くからある日本語は、かなり的を得ていると実感する今日この頃です。
ーーーーーーーーーーーー
『多動力』の根っこにあるのは、「自分軸」
コスパよく動いて、ダメなものは切り捨てるのは、全て自分第一で考えてのことです。
対する『静止力』の根っこにあるのは、「他人軸」
地元に根付いて、人のため、地域のため、社会のために動くこと。
その結果、それが自分にも、周りにも返ってくるという思想。
僕は、ずっと「自分軸」で物事を考えてきました。
それが、30歳近くなり、「他人軸」を大事にすることの重要性を、ようやく肌感を持って実感しはじめました。
(かなりな遠回り・・・)
随分と話が逸れてしまいましたが、 要するに、『静止力』オススメです。