内田樹さんの『困難な成熟』と言う本を読んだので、思ったことなど書いていきます。
この本を手にした経緯なんかは、こちらの記事を参考にしていただければ。
2015年に出版され、2017年に文庫版が出たので、内容的にはちょうど5年くらい前の本になります。
本を読む時、あるいは本を買う時、僕はまず表裏の表紙、表紙の裏、帯、著者の経歴、目次、はじめに、おわりに、という順番に目を通します。
この本は、(内田樹さん贔屓という面も多々にありますが、、)はじめにとおわりにを読んで、購入を決めました。
文庫版のおわりのことばが素晴らしかったので、そのまま引用させていただきます。
人間にとって大切なことのほとんどは、「明確な目標設定/効率的な工程管理/費用地効果のよい目標達成」というような枠組みでは語ることができない。現代人はそれをどうも忘れかけているようです。
まさに自分が取り憑かれていた呪縛です。
だからこそ、ズシンと響いてきました。
無駄はいけない。
最短距離で、成功までいかないといけない。
遊びがあってはいけない。
コストパフォーマンスを大事にする。
明確な目標がないといけない。
僕が取り憑かれていた言葉たちです。
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別の内田さんの本も併せて紹介します。
この本の冒頭、彼が語るのは、
「ワンランク上の自分を目指す生き方」を、そろそろやめにしませんか?
ということ。
ステップアップ、成長していくのが良しとされ、みんなひたすらにキャリアアップを目指す。
だけど、そういうのって、疲れませんか?
ということ。
人間は、意外と壊れやすいです。
特に若い内は、自分に無限の可能性があると思いがち。
なんでもできる、あるいはなんでもできないといけないと思い込み、秒単位でスケジュールを組んだりする。
僕もそんな感じで生きていました。
それが青春だと思っていたし、そうやって"成長"していくものだと思っていました。
だけど、人間なのですから、限界はあります。
無理をすれば、当然どこかで壊れます。
自分の可能性を最大限引き出すには、自分には限界があることを知らないといけません。
自分の限界を知らなければ、自分の能力を最大限発揮することはできません。
自分には限界がある、とまず自覚しなくてはならない。
それができていなかった頃の自分は、本当に辛かったですね。
風邪で寝込んではいけないと思っていたし、常に何かを求めて成長しなくてはいけないと思っていました。
その根底には、
「ある程度までいけば、この頑張りから抜け出せる」
という気持ちもあったのだと思います。
今こうやって少し無理しながらも頑張って、頑張って、頑張って。
その先には、頑張らなくてもいい生活が待っている。
(なんらかの形で不労所得とかを得て、悠々自適に生活している自分をイメージしていました)
もちろん、そうなる人もいるかもしれませんが、僕の場合はそうはなりませんでした。
ある時点で、そう簡単に、セミリタイアの道に進んで行けるわけではないことを知りました。
その時に、ハタと気づきました。
「こんな生活を続けてたら、どこかでガタがくる」
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僕は、目に見える、定量的な目標を目指して奮闘していました。
たとえば、不労所得が年間2,000万入る、みたいな。
そこに行き着きさえすれば、あとは万事解決。人生大勝利、みたいに思ってました。
ある意味、人生の幸福度みたいなものを、お金で測れると思っていたのです。
そんなわけないって、今ならわかります。
もちろん、お金があるに越したことはない。
だけど、お金だけでは決して測ることはできない。
目に見える諸条件がそろえば、「はい、これであなたは幸せです」となるほどに、人間って単純ではないと思うのです。
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ちょっと話が変わるかもしれませんが、健康に当てはめて考えてみます。
必要とされるだけの栄養を取れるための食事をし、足りない分はサプリで補い。綺麗な水を飲んで、タバコを吸わず、酒も飲みすぎす、適度に運動して。
そうやって、条件を1個1個積み重ねていけば、健康は手に入る。
本当にそうでしょうか。
暴飲暴食しながらも、全く健康面に問題がない人を知ってますし、逆に神経質なまでに健康に気を使っていますが、どこか不健康そうな人も知ってます。
「Y = aX + b」みたいな方程式では、健康は表せません。
もちろん、健康に気を遣ったほうが、より健康に近づけるかもしれません。
その努力を否定しているわけではありません。
「健康」には、定量的な要素以外にもたくさんの要素が関係している、ということです。
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色々と話が飛んでしまいましたが、要するに、
「何でもかんでも効率化、最適化、コスパと謳われるが、事はそんなに単純なことではないぞ」
ということを、『困難な成熟』を教えてくれます。
焦って何者かになろうとする努力を決して否定しているわけではないのですが、事はそう簡単ではないのです。
早く成熟することが正義ではないし、それは誰かと比べることでもない。
あんまり、自分を責めない方がいい。
再び引用になってしまいますが、『疲れすぎて眠れぬ夜のために』の中で、内田さんはこんなことも言ってます。
ぼくは、「すぐに幸せになれる」というのは一種の能力だと思います。生存戦略上、この能力は明らかに有利です。
そういう健康的な精神状態の方が、不足感や不幸せを感じながら何かするより、よっぽど物事うまくいくと思うのです。
毎日ゴキゲンに、心地よく生きていく。
今は、それを心に日々を送っています。