「企業分析をするには、必読の1冊!」
そう友人に勧められて、『会計士は見た!』という本を読みました。
著者は、会計士・税理士である前川修満さん。
この本の生まれた経緯について、プロフィールの中に書いてあります。
年々、企業の広報(IR)が盛んになる中で、そこで発信される情報が、しばしば決算書の実情とは大きく異なってることに疑問を抱く。
そして、決算書を通して企業の「裏の顔」を見つけ出す方法と、その面白さをたくさんの人に知ってもらいたい、との思いから本書を記した。
いくら表面上をうまく見せかけたとして、数字は誤魔化せないのです。
誰もが知る有名企業を事例に、決算書からその企業の「裏の顔」を読み解いていきます。
会計の素人でも、この本を読むことで、
・どうすれが企業分析ができるのか?
・良い企業、悪い企業の違いかは何か?
が分かるようになります。
そして、企業分析ができるようと、多くのメリットがあります。
・日常で見聞きする企業のニュースが、深く理解できるようになる
・就職、転職の際に、その企業が優良企業なのか、将来性があるのか予測できるようになる
・株式の投資判断に役に立つ
などなど。
決算書から企業分析が出来るようになると、企業の見方がガラッと変わります!
それでは、『会計士は見た!』をご紹介していきます。
『会計士は見た!』はどんな本か?
会計士である著者が、企業の決算書を通して、企業の「裏の顔」を暴いていきます。
取り上げる企業は、誰もが知る大企業ばかり。
(なお、本記事で扱う企業の財務状況等の情報は、全て本書出版当時(2015年頃)のものとなります。ご了承ください。)
第1章では、「ソニー」を扱います。
当時、業績不振が数年続いていたソニーでしたが、なぜか利益を赤字にするほど多くの法人税を納めていました。
通常、利益が少なければ、法人税もそれに応じて少なくなるはず。
なぜか?
答えは、ソニーの業態変化にありました。
第2章では、「大塚家具」を扱います。
本書の執筆時は、ちょうど経営方針を巡った親子対立がクローズアップされていたタイミングでした。
父と娘と、両者の経営方針の違いとは?
そして、大塚家具が衰退していった理由にも迫ります。
第3章では、「コジマ」と「日産」を扱います。
大量のリストラを実施し、衰退していったコジマ。
対して、同様にリストラを行ったにも関わらず、急激な業績回復を見せた日産。
両者の違いとは一体何だったのか?
第4章では、「キーエンス」を扱います。
電子機器メーカーでもあるキーエンスは、
・総合商社、テレビ業界を凌駕する給与水準(平均年収1648万円)
・競合他者が60〜70%であるところ、たった20%程度の原価率
・全業種の平均営業利益率が3.6%であるのに対して、52.6%という驚異の数字
を誇る隠れた超優良企業です。
キーエンスがすごい理由を、決算書から読み解きます。
第5章では、2015年上期に倒産した「スカイマーク」と「江守グループホールディングス」を扱います。
2社とも、増収増益を続けている中での突然の倒産でした。
しかし、倒産の予兆は、すでに過去数年の決算書の中に現れていました。
倒産する企業の典型的なパターンを、実例を通して見ていきます。
第6章では、不正会計を行っていた「東芝」を扱います。
東芝は、どのようにして監査の目をかいくぐり、不正会計を行ったのか。
また、見せかけの決算書を作っていたものの、東芝が窮地に陥っていることは、実は決算書の中でしっかりと現れていたのです。
この本をオススメするポイント!
素人でも読めるくらい明快で分かりやすい!
この本の1つ目の大きな特徴は、何と言っても「圧倒的な分かりやすさ」です。
会計の素人でも、戸惑うことなくドンドン読み進めることができます。
実際、僕はたった数時間で読み終えてしまいました。
通常、こういう専門書って、分からないところで立ち止まったり、いちいち調べたりして、読み切るのにけっこう時間がかかるものです。
苦手意識で、敬遠している人も多いはず。
しかし、本書は素人向けに優しく書いてくれています。
難しい専門用語があっても、必ず立ち止まって解説をしてくれます。
物事の背景までしっかりと教えてくれるので、ストンと入ってきます。
たとえば、僕は恥ずかしながら、東芝の不正会計の話についてはなんとなくしか分かっていませんでした。
それが、本書をサーっと読んだだけで、
「そういうことだったのか!だから監査の目も誤魔化せたのか!」と、あっさり理解できました。
こんなに読みやすい専門書って、なかなかありません!
企業を分析していくプロセスが見えるので、納得感がある!
この本の2つ目の特徴は、企業分析に対する「納得感」です。
その理由は、「企業分析を、著者と一緒にやっていく」という構成になっているからです。
本書の進め方は、いたってシンプル。
ある企業について、著者が疑問を持ちます。
たとえば、
「なぜ、スカイマークは増収増益を続けていたのに、急に潰れてしまったのか?」
その疑問を解決するために、著者も0から決算書を読んでいきます。
解決していく過程を、一緒に見ていけるのです。
要は、思考プロセスがわかるので、非常に「納得感」があります。
「企業分析って、こうやってやっていくのか。」ということを体感できます。
巷に多いのが、
「この会社は、〇〇がこういう数字になっているから、潰れたのだ。」
と、ただ事実を提示するだけの企業分析です。
僕ら素人からすると、
「なぜ、その数字に着眼したのか?」
「なぜ、この企業が潰れた原因が〇〇にあるって分かったのか?」
等々、その分析の過程が知りたいのです。
その過程、思考プロセスを知ることができれば、他にも応用できるわけですから。
そのあたりが、非常に丁寧に解説されています。
まるで、探偵小説を読んでいるようです。
1つ1つ謎を解いていく感覚が面白くて、ドンドン読み進めてしまいます。
最後に一言!
決算書から企業分析をする本はこれまでいくつか読んできましたが、この本はその中でも圧倒的に面白くて、分かりやすいです。
企業分析って、ある程度プロじゃないと難しいという既成概念がありました。
しかし、本書を読んで、「あ、そうやって見ていけばいいのか。」というコツのようなものを掴めました。
表に見せている顔だけじゃない、企業の「裏の顔」
情報が溢れる現代において、そこを読み解けるようになることは、非常に重要なスキルです。
「事実は小説より奇なり」です。
ぜひ、面白い推理小説を読むような気持ちで、本書を手にとって見てください!
続編の『やっぱり会計士は見た!』も併せてどうぞ!
併せて読みたい!
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』
会計の入門書にはうってつけの1冊。
日常の疑問から、会計の考え方を学んでいきます。
『財務3表一体理解法』
PL/BS/CFという財務3表を読めるようになるための入門書。
会計や簿記を知らない人に向けて書かれており、全体像を掴むには最適の参考書。
『ざっくり分かるファイナンス』
会計が過去の業績を読み解くための知識に対して、ファイナンスは将来的な企業価値を見い出すための知識。
ビジネスマンにとって必須であるファイナンスの入門書。