身近な人が亡くなった時、相続税がどれくらいかかるか、正確に把握していますか?
おそらく、正確に把握している人は少ないはずです。
僕自身も、そうでした。
そんな時、
あれを鵜呑みにしたら大損します!
という帯のキャッチに惹かれて、『やってはいけない相続対策』という本を読みました。
元国税調査官が書いた、相続のリアルについての本です。
この記事は、
●将来の相続に対して、漠然と「準備しないとなー」と思っている人
●「相続対策には、タワマンや一棟アパートが良いらしい!」と思っている人
●相続税に今からビクビクしている人
に向けて書きました。
この本を読めば、
「控除制度も多いので、相続税って実はそんなにかからない!」
「正確に税額を把握できれば、焦って相続対策する必要もない!」
ということがわかります。
ぜひ、参考にしてみてください!
30秒でわかるこの本の要約
相続対策と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?
・タワーマンションの購入
・一棟アパートの経営
・タンス預金でうまく隠す
相続税を節税するため、このような方法で相続対策を行う人がたくさんいます。
しかし、それは本当に相続対策になっているのでしょうか?
作者は、疑問を投げかけます。
「あなたは、実際に相続税がいくらかかるか、正しく把握していますか?」
きちんと計算すると、相続対策をしなければならないほど相続税がかかる人は、実は本当に一握りです。
下手に相続対策をしたことで、逆に資産が目減りしてしまうケースが多いのです。
相続対策のまず第一歩は、相続税を知ることだといえます。
“相続対策”の大きな落とし穴
最初の章では、世間で言われている相続対策の落とし穴について解説しています。
その前に、大前提として、著者は苦言を呈します。
業者は私たちのことを第一に考えているわけではありません。
自分の会社の利益を最優先に考えていることを肝に銘じてください。
タワーマンションによる節税の落とし穴
タワーマンションは、なぜ節税になると言われているのでしょうか?
それは、簡単に言うとこういうことです。
タワーマンションは、階層によって金額が違います。
下の階が5000万程度でも、上層階になると平気で2億、3億と、大きく価格が跳ね上がります。
それに対して、「相続財産としては、いくらの評価になるか?」という計算をするときは、違った方法で計算されます。
説明は省いて簡単に言うと、
「同じ面積の物件は、階数に関係なく、同じ金額として評価される」
ということです。
つまり、低層階の5000万の部屋も、高層階の3億の部屋も、相続財産としては同じ評価額になります。
3億の物件を買っても、実質的には5000万の資産として見てもらえ、大きな節税対策になると言われてます。
しかし、ここには実は大きな落とし穴があります。
「相続対策として購入したと思われる場合は、市場で売買される金額で評価される」
というものです。
つまり、5000万として評価されると思いきや、相続対策だと明らかに判断された場合はそのまま3億として評価され、相続対策には全くならないのです。
アパート経営による節税の落とし穴
次に、アパート経営による節税についてです。
アパート経営が節税になる原理は、次の通りです。
●アパート経営のための土地価格は、本来の評価額より50%減額される
●ローンを組んでアパートを建てた場合は、ローンの金額を資産から差し引くことができる
一見、魅力的な節税対策です。
しかし、素人がいきなりアパート経営に手を出して、うまくいくはずがありません。
実際は数百万の相続税で済むはずが、不動産業者の口車に乗せられて、無理して建ててしまうケースが多いです。
結果的に、
●入居者が集まらず赤字経営が続く
●毎年のランニング費用によって、資産を圧迫
●売却しても資産価値は目減りしているので、多額のローンだけが残ってしまう
となってしまうケースが多いのが実態です。
タンス預金による節税の落とし穴
「銀行にお金があったり、不動産を持っているから財産がバレてしまう。
それなら、いっそ現金でこっそり隠しておけば大丈夫。」
そう考える人もいるかもしれません。
しかし、国税調査官は、個人の預金記録も調べることができるそうです。
明らかに資産がどこかに消えている場合は、調査が入ることもあります。
庭に現金を隠していたとしても、調査員がやってきていとも簡単に見つけてしまうそうです。
見つかると、加算して税金を払うことになり、最悪の場合は刑事罰に問われる可能性もあるそうです。
相続税って、実はそんなに高くない!
「最高税率は55%・・相続税って、高い!」
そんなイメージを持っている人も多いと思います。
しかし、実は55%の税率がかかるのは、本当にごく一部の超富裕層だけなのです。
この本の中で紹介されているように、
「妻、長男、長女、の3人が、2億円を相続したら、相続税がいくらになるか?」
を簡単にシュミレーションしてみます。
2億円を相続すると、どれくらい相続税がかかると思いますか?
僕は、勝手なイメージで数千万円かかると思っていました。
しかし、結論はあっと驚く金額です。
一緒に見ていきましょう。
なお、計算ややこしいので、ここは結論まで読み飛ばしてもらって問題ありません。
2億円を家族3人で相続した場合の計算方法
まず、基礎控除というのがあります。これは、
「3000万+600万✖️3人=4800万が無条件で控除」になります。
したがって、
●2億ー4800万=1億5200万
が課税の対象となります。
次に、法定で決まった相続分があります。
これによると、
●妻:1億5200万✖️1/2=7600万
●長男:1億5200万✖️1/4=3800万
●長女:長男と同様に、3800万
この金額に対して、国税庁のサイトにある相続税の早見表から、相続税を計算します(No.4155 相続税の税率|相続税 |国税庁を参照)
●妻:7600万✖️30%−700万=1580万
●長男:3800万✖️20%−200万=560万
●長女:長男と同じく、560万
よって、
●1580万+560万+560万=2700万
が、彼ら3人にかかる相続税になります。
あとは、
●2700万✖️(それぞれが相続する金額/全体の遺産額)
で、1人1人の相続税が決まります。
●妻:1億5000万
●長男:2500万
●長女:2500万
を相続したと仮定します。
●妻:2700万✖️(1億5000万/2億)=2025万
→配偶者は1億6000万まで無税になるので、実質0円
●長男:2700万✖️(2500万/2億)=337.5万
●長女:長男と同じく、337.5万
となります。
3人の納税額は・・・?
このようにすると、家族3人で2億を相続したとしても、
●妻:0円
●長男:337.5万円
●長女:337.5万円
が納税額になります。
難しい計算式は一旦置いておいて、何が言いたいかと言うと、
「きちんと計算してみると、意外と納税額は多くない!」
ということです。
無知は、損をする時代
たった数百万の納税で済むのに、不要な相続対策をする必要はありません。
それにもかかわらず、なぜ人は不要な相続対策をしてしまうのでしょうか?
それは、
「単純に、きちんと相続税を計算するのが面倒くさい」
そして、
「相続対策になりそうというイメージや、人のススメでやっている」
からです。
この記事の最後に、改めて著者の言葉を引用します。
業者は私たちのことを第一に考えているわけではありません。
自分の会社の利益を最優先に考えていることを肝に銘じてください。
そして、
下手な相続対策を行って資産を目減りさせることの方がよほど損になります。
相続対策のまず第一歩は、相続税を知ることだといえます。
無知は、損をする時代です。
僕自身も、知っているつもりで、全く知らなかったことに驚きました。
この本をきっかけに、まずは「知ること」から始めてみてはいかがでしょうか?
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