湊かなえさんの『高校入試』を読みました!
『高校入試』は、どんな物語?
「入試をぶっつぶす!」
入試前日に、突如黒板に現れた1枚の張り紙。
県内随一の進学校・橘第一高校の入試で起きる不可解な事件の数々。
犯人は一体誰なのか?
そもそも、犯人の狙いは何なのか?
19人の語り手と、謎の掲示板の書き込み。
入試をめぐり、人間の本性が暴かれるミステリーです。
●入試を一度でも経験たことがある人
●湊かなえさんの作品が好きな人
●ハラハラするサスペンスが好きな人
には、ぴったりの作品です!
最後までわからない犯人とその狙い
この物語を面白くさせているのは、
「犯人は一体誰で、その人物の狙いは何なのか?」
が、最後までなかなか見えてこない点です。
犯人の意図がわからないので、奇妙な出来事たちがますます奇妙に思えます。
入試前日から、不可解なことが連続します。
●前日に、突然現れた「入試をぶっつぶす!」という張り紙
●ある先生の携帯電話が無くなる
●盗まれるゴールドカード
●試験中に突然鳴り出す携帯電話
●入試問題がなぜかタイムリーに掲示板に掲載される
●あったはずなのに、突然消える答案用紙
19人の語り手と、謎の掲示板への投稿で進行する物語。
登場人物全員が、何かしらを抱えていからこそ、全てが怪しく思えてきます。
語り手となる19人の中の誰かが、犯人なのです。
“人間らしさ丸出し”の語り手たちの想い
もう1つのポイントは、
「受験という人生の一大イベントが、人の本性を丸裸にする」ということ。
登場人物たちは、大きく分けて「先生・受験生・受験生の親」という3つの立場。
しかし、同じ立場でも、それぞれの思惑が違います。
先生側にも、いろんな人がいます。
●初めて立ち会う受験なので、できることを一生懸命しようとする先生
●出世のため、採点の正確性よりも、早く採点を終えることを第一に考えている先生
●退職後の自分の進路にしか興味がなく、事件をもみ消したいと考える校長
また、素直な受験生ばかりではありません。
●親も兄も全員一高に行っており、受かるのが当たり前というプレッシャーに押しつぶされそうな生徒
●自分は余裕で受かるが、自分をいじめていた奴には落ちてほしいと願う生徒
●親の期待が大きすぎて、自分を見てくれないことに不満な生徒
また、親も受験を手伝う時代です。
●同窓会会長の立場を利用して、脅迫してでもなんとか息子を合格させようとする親
●娘の携帯が鳴ったことを、先生のせいにして、点数を上乗せしてもらおうとする親
一癖も二癖もある彼らの思惑が、物語の奥行きを広げてくれます。
“受験”が、人間の本性を丸裸にする
受験は、人生をかけた一大イベント。
だからこそ、恥じらいや遠慮をすっ飛ばして、人間の本性が丸出しになります。
読みながら、本当にイライラしました。笑
と同時に、受験を経験した身からいうと、彼らの気持ちが痛いくらいわかってしまいます。
●先生にとっては、毎年やってくるイベントの1つ。それよりも、明日の旅行のことで頭がいっぱいだ・・
●自分の子供が受験生なら、使える権力は全部使ってでも合格させてあげたい!
●親の勝手な期待なんか、知ったこっちゃない!
痛いくらい生々しい人間模様に、読みながら思わず苦笑いしてしまいます。
入試を舞台に、人間の本性を暴く物語
受験を経験したことがある人は、ぜひ読んでみてください。
「自分は彼らとは違う」と言いながらも、いつの間にか登場人物たちに感情移入してしまっている自分がいるはずです。
当時は、受験生の立場しかなかった入試という舞台。
こんなにもたくさんの人が関わっていて、作り上げられていたのです。
最後の結末は伏せますが、納得感のある締めくくり方でした。
登場人物たちが気持ちいくらい人間らしいので、読んでいてくすぐったくなりますが、だからこそリアリティ満点の作品です。
●入試を経験したことがある
●湊かなえさんの作品が好きである
●ハラハラするサスペンスが好きである
1つでも当てはまる方は、手に取ってみることをオススメします!
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